
★要点
北海道日本ハムファイターズの使用済みバットが、クラフトビール「そらとしば シーズナル#16 バットエール2025」として生まれ変わる。ファン参加型のプロジェクトで、選手との繋がりを感じるユニークな循環型経済の実証だ。
★背景
年間10万本超の木製バットが消費されるプロ野球界で、廃棄物削減と資源の有効活用が喫緊の課題。地域密着型スポーツチームが、ファンエンゲージメントを高めながら環境負荷低減に貢献する新たなモデルを提示する。
グラウンドで役目を終えたバットは、ただのゴミではない。北海道日本ハムファイターズの選手が激闘の末に折ったバットが、まさかのクラフトビールとなってファンを魅了する。エスコンフィールドHOKKAIDOで提供される、「そらとしば シーズナル#16 バットエール2025」。資源の循環、地域との絆、そしてスポーツの物語を一杯に凝縮した、他に類を見ないアップサイクル・クラフトビールだ。
野球とビールの奇跡的な融合、バットが紡ぐ新たな物語
北海道北広島市の「エスコンフィールドHOKKAIDO」に併設されたクラフトビール醸造レストラン「そらとしば by よなよなエール」が、今年も異色のビールを世に送り出す。それは、野村佑希、矢澤宏太、清宮幸太郎、そしてフランミル・レイエスらファイターズ選手10名が実際に使用し、折れてしまった木製バットをアップサイクルした「そらとしば シーズナル#16 バットエール2025」だ。昨年の好評を受け、今年はバットの使用本数を10本に増やし、生産量も1.5倍に拡大したという。
年間およそ10万本以上が消費される日本のプロ野球および大学野球の木製バット。その多くは箸や箸置きに再利用されるが、プロ野球の使用済みバットをビールの原料にするのは、このプロジェクトが日本で唯一の試みだ。これは、資源の有効活用という現代社会の喫緊の課題に対し、スポーツエンターテインメントが提示する一つの解といえるだろう。


ファンと共につくり出す「味」、地域と環境へのコミットメント
この「そらとしば バットビールプロジェクト」の特筆すべき点は、その製造プロセスにファンが深く関与する点だ。9月27日には、抽選で選ばれた50名のファイターズファンが、のこぎりや鉈を手に、選手たちの汗と努力が染み込んだバットを加工する作業に加わった。その後、加工された木材から水蒸気蒸留によって芳香蒸留水が抽出され、ビールに添加される。これにより、バットが持つウッディで爽やかな香りがビールに吹き込まれるのだ。
開発ブルワーの村田稀水氏は「スッキリドライで飲みやすく、何杯でも飲めるような味わい。バットの爽やかな香りとともに、今シーズンの選手の活躍を思い出してほしい」と語る。ファンが選手を応援し、そのバットに触れ、加工に携わるという一連の体験全てが、ビールの「味」の一部となる。これは、消費者と生産者が一体となる、新しい形の循環型経済の具現化といえよう。


廃棄物ゼロへの挑戦――バットの残材も無駄にしない
「そらとしば バットビールプロジェクト」の徹底した循環の思想は、ビール製造だけに留まらない。香りを抽出した後のバットの端材は、キーホルダーへとリメイクされ、先行開栓イベントの参加者へプレゼントされる。さらに、バットのグリップ部分は、ビールサーバーのタップハンドルとして店舗に登場するという。キーホルダーの加工には、北海道産の木材を使ったバットづくりを手掛ける「一般社団法人日本野球の杜」が協力し、ここでも地域との連携が図られている。


スポーツが示す未来――持続可能性とエンターテインメントの融合
グローバルな気候変動問題や資源枯渇が叫ばれる中、企業や団体には持続可能な取り組みが強く求められている。スポーツ界も例外ではない。このバットビールプロジェクトは、プロスポーツチームが単なる興行団体ではなく、地域社会や地球環境に対し、具体的な行動を通じて貢献できることを明確に示した。
野球ファンは、ビールを飲むという行為を通じて、お気に入りの選手との繋がりを深めると同時に、資源のアップサイクルという環境配慮型アクションに自然と参加することになる。これは、エンターテインメントが持つ「人を惹きつけ、行動を促す」力を最大限に活用した、非常に示唆に富む事例といえるだろう。
【製品概要】
名称:発泡酒
製品名:そらとしば シーズナル#16 バットエール2025
原材料:大麦麦芽・小麦麦芽・ホップ・ウッドチップ
ビアスタイル:フリースタイルライトエール
アルコール分:5.0%
販売価格:レギュラー(420ml)900円、レギュラープラス(510ml)1,100円
販売場所:そらとしば by よなよなエール
提供期間:2025年11月22日(土)~未定
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