
★要点
TOTOが、衛生陶器(トイレなど)の製造工程で最もCO2を排出する「焼成」プロセスにおいて、CO2を排出しないグリーン水素を都市ガスに混ぜて燃焼させる「水素混焼」での生産を開始。まずは水素混焼率20%でスタートし、年間140トンのCO2排出削減を目指す。
★背景
製造業の脱炭素化は、電力の再エネ化だけでなく、製品を焼き固める際などに使う「熱エネルギー」の転換が大きな壁となっている。特に1000℃以上の高温を要するセラミック産業において、化石燃料に代わる熱源として「水素」の実用化が現実的な選択肢として浮上。TOTOの挑戦は、日本のものづくりの未来を占う試金石だ。
私たちの暮らしに欠かせない、あの真っ白な衛生陶器。その製造プロセスが、静かに、しかし確実に変わろうとしている。TOTOが、製品を焼き固めるための燃料に、CO2を排出しない「グリーン水素」を導入したのだ。石炭からガスへ、そして水素へ。100年以上の歴史を持つものづくりの巨人が、カーボンニュートラルという時代の要請に応えるべく、その心臓部である“窯の火”を変える。
製造工程の“ラスボス”——CO2の75%を占める焼成工程
衛生陶器の製造において、CO2排出量の約75%を占めるのが、粘土を高温で焼き固める「焼成」工程だ。TOTOはこれまでも、燃料を石炭から天然ガスへ転換したり、断熱性能の高い最新の窯を導入したりと、この工程のCO2排出削減に挑んできた。しかし、化石燃料を使う以上、排出量をゼロにすることはできない。 そこで白羽の矢が立ったのが、次世代エネルギーの本命「水素」。燃焼時にCO2を排出しない水素を、従来の都市ガスに混ぜて燃やす「水素混焼」技術の確立に向け、2023年から検証を重ねてきた。

自社でつくる「グリーン水素」、北九州市のお墨付きも
今回の取り組みの先進性は、ただ水素を使うだけでない。その水素を、再生可能エネルギーの電力で自社製造する「グリーン水素」である点だ。TOTOサニテクノ小倉工場の敷地内に水素発生装置を設置し、水を電気分解して水素を製造。燃料の調達から製造まで、一貫してCO2排出を抑える仕組みを構築した。 このグリーン水素の製造は、北九州市から「低炭素水素認証」の第一号にも認定された。まずは水素の混焼率20%で実際の製品生産を開始し、年間140トンのCO2削減を見込む。今後は、混焼率の向上や、他の製造拠点への展開も検討していく。
外部環境に強い、しなやかな生産体制へ
この挑戦は、単なる環境対策に留まらない。国際情勢によって価格が乱高下する化石燃料への依存度を下げることは、企業の生産体制をより強靭で、しなやかなものにする。外部環境の変化に左右されにくい、持続可能なものづくりへ。 TOTOは、国際的なSBTイニシアチブから1.5℃水準の認定も受けている。経済的な価値と、社会的・環境的な価値を両輪で追求する。100年以上にわたり、日本の暮らしの“当たり前”を支えてきた企業の次なる挑戦が、今まさに始まっている。
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