★ここが重要!

★要点
鎌倉市のゼロ・ウェイスト政策を背景に、株式会社カヤックらが組み立て式生ごみ処理器「FAB de キエーロ」を開発。2026年2月12日より、株式会社カインズのDIYプラットフォーム「CAINZ DIY MARKET」で販売開始。電気不要でベランダに設置できる製品で、購入費用は同市による助成制度の対象となる。
★背景
焼却施設停止を機に、自治体主導のごみ削減が加速。大量処理から分散処理へ。市民参加型の循環モデルが、都市のごみ問題に現実味を帯びてきた。

ごみは“出すもの”という前提が揺らいでいる。焼却場に運び、燃やし、埋め立てる。そんな一方向の流れは、資源価格の高騰と気候危機の前で限界を露呈した。鎌倉から始まる新たな実験は、家庭のベランダに小さな循環をつくる試みだ。組み立て式生ごみ処理器「FAB de キエーロ」。土の中の微生物に仕事を任せる、ごみ革命である。

焼却停止が突きつけた現実――ゼロ・ウェイストかまくらの本気度

神奈川県鎌倉市。観光地として知られるこの街で、市内唯一の焼却施設「名越クリーンセンター」が2025年に稼働停止した。老朽化が理由だが、本質はそこではない。焼却に依存する構造そのものが持続不可能になっていた。
焼却にはコストがかかる。CO₂も排出するし、最終処分場の残余年数も限られる。全国の自治体が同様の課題を抱える中、鎌倉は「ゼロ・ウェイストかまくら」を掲げた。リデュース、リユース、リサイクル。その先にあるのは“燃やさない”選択肢だ。
そこで浮上したのが、生ごみの家庭内処理。分散型の循環モデルだった。

微生物とDIY――「キエーロ」の進化形

原点は、葉山の市民発明家・松本信夫さんが生み出した「キエーロ」。土中のバクテリアが生ごみを分解する仕組みだ。電気も水も使わない。穴を掘り、埋め、混ぜ、覆う。それだけ。
だが従来型は手作り中心で、生産量に限界があった。庭が必要、黒土が重い、といった課題もあった。
そこで動いたのが、ファブラボ鎌倉と慶應義塾大学SFC田中浩也研究室、そして株式会社カヤックと株式会社カインズ。デジタル設計と木工CNC「ShopBot」による精密加工で、フラットパック構造を実現。輸送効率を高め、ベランダ設置可能なサイズへ再設計した。
完成したのが「FAB de キエーロ」。価格は税込38,500円。鎌倉市の助成制度を使えば実質負担は大幅に軽減される。
DIYで組み立て、自分の手で仕上げる。処理器であり、学習装置であり、参加型インフラでもある。

「キエーロ」考案者・松本信夫氏とオリジナルの「キエーロ」
電気や水を使わず、土を入れて生ごみを埋めるだけで分解されます

集中から分散へ――世界が模索するごみ戦略

世界ではいま、廃棄物管理の再設計が進んでいる。欧州ではバイオウェイストの分別回収が義務化され、都市内コンポストが普及。アジアの都市部でも焼却依存からの脱却が議論されている。
大量収集・大量焼却は効率的に見えて、実は脆弱だ。施設停止一つで街は機能不全に陥るし、輸送燃料の高騰も無視できない。
対して分散型は、一見非効率に見えるが、リスク分散という観点では強い。家庭や学校、商店街がそれぞれ小さな処理拠点になり、災害時にも機能する。
「FAB de キエーロ」はその縮図だ。土というローテクと、デジタルファブリケーションというハイテクの融合。テクノロジーは巨大施設だけのものではない、という宣言でもある。

ごみを“体験”に変える――共創が生む文化

このプロジェクトの核心は製品そのものではなく、自治体、市民、大学、企業が横断的に関わった点にある。
ファブラボ鎌倉は、デジタル工作機械を地域に開く拠点だ。田中研究室は、アップサイクル社会を研究する。カヤックは「つくる人を増やす」を掲げる企業で、カインズは全国に店舗を持つ流通基盤だ。
点だった活動が線になり、面になる。市民が買い、組み立て、使い、学ぶ。子どもが微生物の働きを知る。ごみが教材になる。
環境問題は“我慢”では続かない。それが体験に変わったとき、環境に優しい行動は、文化として根付くだろう。

ベランダから始まる都市の再設計

幅910ミリ、奥行378ミリ、高さ731ミリ。小さな箱だが、奥が深い。
日当たりと風通しの良い場所に置き、土を入れる。深さ20センチの穴を掘り、生ゴミを混ぜ込んで、乾いた土で覆う。これを繰り返すだけ。
そうすると、いつしか生ごみは消える。だが正確には消えたのではなく、バクテリアによって分解され、土に戻っているのだ。目に見える形で循環を体感できる、貴重な体験だ。
都市の持続可能性は巨大な政策だけでは決まらない。人々のベランダ単位の行動が積み重なるかどうか、が重要だ。
鎌倉の挑戦は、理想論ではない。焼却停止という現実から生まれた選択だ。自治体補助という制度設計まで含めて、実装段階に入っている。
こうした小さな選択の積み重ねが、街のかたちを変えるだろう。

「FAB de キエーロ」販売ページ:https://img.cainz.com/diy-market/item.html?jan=4550596188096
「FAB de キエーロ」公式サイト:https://fabde-kiero.studio.site

販売情報
商品名:FAB de キエーロ
発売日:2026年2月12日
販売:CAINZ DIY MARKET
価格:38,500円(税込)※助成制度対象

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