VUILD株式会社が開発した「NESTING(ネスティング)」は、施主自らが設計から施工までを担える住宅キットだ。建築知識がない素人でも、プラモデル感覚で家を建てられるこの技術は、建設業界の人手不足や建設費高騰の課題解決の一手となることが期待されている。テレビ取材で紹介されたユーザーの事例や、デジタル技術を駆使した制作プロセスをもとに、「NESTING」が持つ可能性を探る。

プラモデル感覚で家を建てる「NESTING」は、建設業界が抱える課題への新たな解決策。

「NESTING」は、デジタルファブリケーション技術を活用した住宅キット。この技術は、3D CADデータを基に木材を加工し、番号付きの部材をプラモデルのように組み立てる仕組みだ。使用される部材はすべて10kg以下の重さで、女性や高齢者でも簡単に持ち運びができる。また部材にはビス穴や番号が刻印されており、初心者でも短期間で精度高く施工できる。
あるユーザーは「自分たちで家を建てることで安心感がある」と語る。建築の素人でありながらも、番号を頼りに作業を進めることで、着工から約2か月程度で完成が見えてきたようで「失敗しても修正方法を教えてもらえるので不安はない」と、施工を楽しんでいる。
近年、建設業界では大工職人の高齢化による人手不足が深刻化している。1980年代には80万人以上いた大工就業者は、現在その半数以下となり、2040年には15万人を切ると予測されている。さらに資材高騰や円安の影響で、建設費用も年々増加しているため、このような状況下で、専門職に頼らず施主自身が主体的に施工を行うという新しい家づくりの形を、「NESTING」は提案している。
某テレビ番組で紹介された事例では、耐震基準を満たした住宅を1か月で完成させ、費用は約1200万円に抑えられた。この価格帯は一般的な新築住宅と比べ極めてリーズナブルで、建設費高騰の課題に対する実効的な解決策といえる。

地域特性に応じた展開と「co-build」の価値。

「NESTING」のもう一つの特徴は、地域の特性や施主のニーズに合わせたカスタマイズが可能な点だ。専用アプリを使えば、広さや間取り、素材を自由に選べる。さらに、VUILD株式会社は能登半島地震で被災した地域での住宅再建プロジェクトも進行しており、地方や離島など大工不足が顕著な地域での活用が期待されている。
家づくりの過程を家族や仲間と楽しむ「co-build(コビルド)」という考え方も注目されている。週末ごとに仲間と協力しながら施工を進めることで、完成後の家に対する愛着が深まり、施主自身の手で作り上げる達成感が得られる。このプロセスが多くの参加者に「自分たちで作る楽しさ」を提供し、建築に対する新たな価値観を広めている。
「NESTING」は、雪深い北海道から沖縄の温暖な気候まで、地域ごとに異なる気象条件に対応する設計開発が進められており、離島や山間部など従来の建設手法が難しい場所への導入も検討されている。
同社には日本全国から問い合わせが寄せられており、「NESTING」という手法は建設業界の人材不足に対する解決策としての可能性を示すと同時に、家づくりを通じた新たなコミュニティ形成のきっかけ作りとしても期待されているようだ。

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