スポーツテック企業のユーフォリアと、大阪大学発スタートアップのイムノセンスは、アスリートのコンディション管理を飛躍的に向上させる新サービスを共同で開発し、2025年夏から提供を開始する。このサービスは、イムノセンスの唾液測定キット「GLEIA」で免疫指標「sIgA」を約10分で測定し、そのデータをユーフォリアの管理システム「ONE TAP SPORTS」に連携させることで、選手のコンディションをリアルタイムに可視化する仕組み。科学的根拠に基づくコンディショニングの実現で、スポーツ界の長年の課題解決を目指す。

「見えない疲労」との戦い、従来のコンディション管理が抱える課題。

最高のパフォーマンスを追求するアスリートにとって、コンディションの維持は極めて重要。しかしその管理手法は、選手の主観的な感覚や指導者の経験則に頼る部分が大きかった。また、客観的なデータを求めても、血液検査のような侵襲的な方法は選手に身体的負担を強いる上、結果判明までに時間がかかり、リアルタイムでの指導に活かしにくいというジレンマを抱えていた。こうした状況は、目に見えない疲労の蓄積や免疫力低下を見過ごす原因となり、オーバートレーニングや感染症による離脱、重要な試合での不調など、選手とチームにとって深刻なリスクを生み出してきた。

大阪大発の革新技術「GLEIA」、10分で免疫状態を測定。

この課題を打ち破るのが、イムノセンスが開発した超小型の唾液測定デバイス「GLEIA(グライア)」。このデバイスは、身体の免疫バリア機能の指標となる唾液中のたんぱく質「sIgA」の濃度を、約10分という短時間で高精度に解析する。これは、大阪大学で開発された独自の「金結合電気化学免疫測定法」により実現したもので、手のひらサイズの機器ながら、1兆分の1グラムを検出する大型検査機並みの感度を誇る。採血も不要で、唾液を採取するだけという非侵襲性も大きな特徴。これにより、練習前後や合宿中など、どんな場所でも手軽に、選手の身体的負担なく免疫状態をリアルタイムで把握することが可能になる。

データプラットフォーム「ONE TAP SPORTS」との連携がもたらす価値。

今回の新サービスの核心は、この「GLEIA」で測定したsIgAのデータを、ユーフォリアが提供するデータマネジメントシステム「ONE TAP SPORTS」に直接取り込み、一元管理できる点にある。「ONE TAP SPORTS」は、すでにラグビー日本代表をはじめ国内外1,700以上のチームで導入実績を持つプラットフォーム。練習強度や時間、睡眠、食事、ケガといった日々のコンディションデータが集約されている。ここにsIgAという客観的な免疫指標が加わることで、データの価値は飛躍的に高まる。選手や指導者は専用のダッシュボードで、sIgAの値と他のパフォーマンスデータを組み合わせ、体調変化の予兆を早期に発見。科学的根拠に基づいた、より緻密なトレーニング計画の策定やピーキング調整、ケガの予防が可能になる。

スポーツ界の新たなスタンダードへ、トライアルを経て今夏始動。

この画期的なサービスは、現在すでに大学駅伝部などでトライアル導入が進行中。現場での有効性を検証した上で、2025年夏からプロスポーツチーム、実業団、大学などを対象に本格的な提供を開始する予定だ。将来的には、全国の中学・高校まで含めた幅広い年代への導入を見据え、パフォーマンス向上と健康管理を両立させる新しい指標の確立を目指す。主観と経験に頼ってきたコンディショニングを、客観的データで科学的に支援するこの取り組みは、アスリートの持続的な競技力向上を支え、日本のスポーツ界全体のレベルを引き上げる可能性を秘めている。

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