
★要点
京急電鉄とスタートアップのFASHION Xが、不要な衣類や雑貨を郵送で回収し、その収益の一部を国内の貧困児童への寄付・支援につなげる新サービス「キフル」の実証実験を開始。利用者は専用キットで不要品を送るだけで、子ども7人分の食事または1人分の教育支援が可能になる。
★背景
年間約50万トンの衣類が廃棄される環境問題と、子どもの7人に1人が相対的貧困状態にある社会課題。これまで別々に語られがちだった2つの問題を、「不要品の再流通」をハブとして同時に解決するこのモデルは、企業のサステナビリティ活動が、環境貢献(Eco)と社会貢献(Social)を両立するフェーズに入ったことを象徴している。
クローゼットで眠っている、もう着ない服。その一着が、お腹を空かせた子どもの一日を支えるかもしれない。京急電鉄とスタートアップのFASHION Xが共同で始める「キフル」は、そんな優しい循環を生み出すための新しい仕組みだ。不要品を箱に詰めて送るだけ。その小さなアクションが、衣類廃棄という環境問題と、子どもの貧困という社会課題に、同時にアプローチする。
年間50万トンの廃棄と、7人に1人の貧困
日本の社会には、2つの大きな“もったいない”が存在する。一つは、まだ着られるにも関わらず、年間約50万トンもが廃棄される衣類。もう一つは、約7人に1人の子どもが相対的貧困状態にあり、十分な食事や教育の機会を得られていないという現実。 これまで京急電鉄は、駅に回収ボックスを設置し、約32.5トンの古着を回収するなど、衣類廃棄問題に取り組んできた。しかし、もっと手軽に、もっと多くの人が参加できる仕組みは作れないか。そして、そのアクションを環境負荷の低減だけでなく、より直接的な社会貢献に繋げられないか。その答えが、郵送回収型の寄付支援サービス「キフル」だった。


4,950円のキットが、7人分の食事に変わる
「キフル」の仕組みはシンプルだ。利用者は、専用サイトから寄付キット(税込4,950円)を購入。届いた回収袋に、不要になった衣類や雑貨、おもちゃ、ランドセルなどを詰め、集荷伝票を貼って発送する。 回収された品物はFASHION Xが責任を持って再流通・リユースさせ、その収益の一部が、国内の子ども食堂への食材提供や、貧困児童への食事・教育支援に充てられる。寄付キット一袋で、子ども7人分の食事、または1回分の授業を提供できる計算だ。寄付先の一つとして、京急沿線で「移動式子ども食堂」を運営するNPO法人とも提携。自分のアクションが、同じ沿線に住む子どもたちの未来に直接繋がる、手触りのある貢献を実感できる。

“参加しやすさ”が、循環の輪を広げる
この取り組みの鍵は、「参加のハードル」を極限まで下げた点にある。回収ボックスが近くにない人でも、自宅から一歩も出ずに参加できる。回収対象も、衣類だけでなく、おもちゃや食器、小型家電までと幅広い。「大掃除で出た不要品を、ただ捨てるのではなく、誰かのために役立てたい」。そんな生活者の善意を、無理なく、スムーズに社会貢献へと繋げるプラットフォーム。 京急電鉄のオープンイノベーションプログラムから生まれたこの共創は、鉄道会社という社会インフラが、スタートアップの機動力と結びつき、沿線住民を巻き込みながら、新しい資源循環の形をデザインしていく。環境にも社会にも優しい、住み続けたい沿線づくりの、新たなモデルケースとなりそうだ。
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