
★要点
2026年7月1日、物質・材料研究機構(NIMS)と日本IBMが、生成AIを活用した次世代の材料研究基盤を構築するため、覚書(MOU)を締結した。
協業の領域は3つ。基盤モデル・大規模言語モデル(LLM)・エージェント技術といった先進AIと数理アルゴリズムの材料分野への応用。量子コンピューティングの応用可能性の探索。そして、データ統合とインフラ整備を通じた研究基盤の構築である。
ここで注目したいのは、3つめだ。
NIMSが持ち込むのは、モデルではない。データである。PoLyInfo、AtomWork-Adv.、Kinzoku、RDE。材料データ中核拠点(MDPF)が管理する、世界最大級のデータ基盤。
そのひとつ、オープンデータベース「Starrydata」は、世界中の論文に載ったグラフから数値を読み取り、23万件を超える実験データを蓄積してきた。熱電材料だけで、4年間に7,000本以上の論文を処理し、4万個を超える試料のデータを集めている。
AIの性能を上げる競争は、いま世界中で行われている。だが、そのAIに何を食べさせるのか。誰がその餌を作り、標準化し、共有するのか。
そちらの競争は、もっと静かで、もっと地味で、そしておそらく、もっと決定的である。
★背景
2023年、Google DeepMindが発表した「GNoME」は、220万件の新しい結晶構造を予測し、うち38万件が安定と判定されたと報告した。AIによる材料探索は、人類が数百年かけて積み上げてきた知識の量を、一気に飛び越えたかに見えた。
だが、予測は予測である。実際に合成できるか、狙った性能が出るかは、作ってみないとわからない。そして「作ってみた結果」こそが、次のAIを賢くする材料になる。
ここに、材料科学特有の難しさがある。
文字や画像と違い、実験データはインターネット上に転がっていない。論文にはグラフとして載っているが、機械が読める数値の形では公開されていないことが多い。しかも、論文になるのは成功した実験ばかりだ。うまくいかなかった条件の記録は、研究室のノートに眠ったまま消えていく。
AIは、成功例しか知らないまま学習することになる。
日本はこの課題に、国の事業として取り組んできた。文部科学省が令和4年度から進める「マテリアルDXプラットフォーム」は、「つくる(ARIM)」「ためる(データ中核拠点)」「つかう(DxMT)」の三層で構成される9年間の事業だ。
2026年8月17日、東京・一橋講堂で開かれたDxMTシンポジウム2026のテーマは「AI for Scienceによるマテリアル開発の革新」。参加は無料で、開催3日前に定員に達して受付を終えた。
関心は、確実に高まっている。
論文に載っているグラフを、思い浮かべてほしい。
横軸に温度、縦軸に電気伝導率。点が並び、線が引かれている。研究者はそれを見て、材料の性質を読み取る。
だが、そのグラフの元になった数値は、どこにあるのか。
多くの場合、著者の手元にしかない。論文に印刷されているのは、数値ではなく絵である。人間は読める。機械は読めない。
NIMSのオープンデータベース「Starrydata」は、その絵をもう一度、数字に戻す作業を続けてきた。
論文のグラフをスクリーンショットで取り込み、独自開発したソフト「StarryDigitizer」に貼りつける。軸の情報を入力し、点を検出させ、あるいは一つひとつクリックして座標を拾う。
気の遠くなる作業である。
それを、専属チーム11名が、何年も続けてきた。積み上がった実験データは、23万件を超える。
生成AIの進化は目覚ましい。だが、AIが賢くなるほど、AIに何を学ばせるかが問題になる。
2026年7月、NIMSと日本IBMが手を組んだ。持ち寄られたのは、片方が技術、もう片方がデータだった。
科学のインフラは、いま、静かに作られている。
論文のグラフを、もう一度「数字」に戻す
Starrydataは、材料科学の実験データを集めるオープンデータベースである。
発案したのは、桂ゆかり氏。2020年11月からNIMSに所属し、現在は11名の専属チームでプロジェクトを運営している。
対象は幅広い。熱電材料、磁性材料、誘電材料、圧電材料、電池材料、低熱伝導材料、高熱伝導材料、そしてハイパーマテリアル。
中心にあるのは、熱電材料だ。温度差から電気を生む材料で、廃熱発電への応用が期待されている。この分野だけで、過去4年間に7,000本以上の論文を処理し、4万個を超える試料の特性データを集めた。
作業の中身は、ひたすら地道である。
論文のグラフ画像をStarryDigitizerに取り込む。軸の目盛りを教える。データ点を自動検出させる。うまく拾えない箇所は、人がクリックして補う。
人手とAIの相互補完。派手さはないが、これ以外に方法がない。
興味深いのは、この過程で副産物が生まれることだ。
NIMSと村田製作所が共同で構築した誘電材料のデータベースでは、5,000本を超える論文から約2万種の材料データを集めた。その作業を担った研究者は、人の手でグラフを数値化する過程で、論文中の誤りを見つけて訂正・排除したと述べている。
機械にただ読ませるのではない。物理的に見て妥当かどうかを、人が判断しながら通す。
だからこそ、出来上がったデータセットの質が高くなる。
このデータベースは学術誌『Science and Technology of Advanced Materials: Methods』に2025年4月に公開され、NIMSは2026年中の一般公開を予定している。
Starrydataのデータは、営利・非営利を問わず無償で使える。CSVやJSONでダウンロードでき、APIからも取得できる。研究用にDOIをつけた凍結版も用意されている。
巨大なオープンデータベースを、世界中の研究者が自由に使えるように。それが、このプロジェクトの掲げる目的である。
AIが賢くなっても、材料は生まれない
2023年、Google DeepMindは「GNoME」という深層学習モデルを発表した。
既知の結晶構造をもとに、新しい安定な材料を予測する。報告された数字は220万件。うち38万件が安定と判定された。人類がそれまでに知っていた無機結晶の数を、桁で上回る規模である。
衝撃は大きかった。材料探索は、これでAIの仕事になったのか。
だが、話はそう単純ではない。
予測された構造が、実際に合成できるとは限らない。合成できたとして、狙った性能が出るとは限らない。温度を変えたらどうなるか、湿気に耐えるか、10年後に劣化しないか。
それは、作って、測って、初めてわかる。
そして、その「作って測った結果」が、次のAIを賢くする。
ここに循環がある。AIが候補を出す。人が作る。結果をデータにする。AIがそれを学ぶ。より良い候補が出る。
循環を回すには、真ん中の「結果をデータにする」工程が不可欠だ。
ところが、この工程がいちばん弱い。
実験結果は、論文になるまで外に出ない。論文になっても、グラフの形でしか公開されない。装置ごとにフォーマットが違い、同じ物性でも記録の仕方が揃わない。
AIに食べさせようにも、餌が加工されていない。
Starrydataがやっているのは、この加工である。散らばった論文から数値を回収し、統一された形式に揃える。地味だが、循環の詰まりを直す作業だ。
失敗したデータに、値段がついた
文献から集めるデータには、構造的な偏りがある。
論文になるのは、うまくいった実験だ。「この条件では性能が出なかった」という結果は、めったに発表されない。
だがAIにとって、失敗データは成功データと同じくらい価値がある。どこがダメなのかを知らなければ、良し悪しの境界を学べない。
そこで日本が用意したのが、実験の現場から直接データを吸い上げる仕組みである。
文部科学省の「マテリアルDXプラットフォーム」は、三層でできている。
つくる——ARIM(マテリアル先端リサーチインフラ)。全国の研究機関にある先端装置を共用し、そこから出るデータを構造化する。
ためる——データ中核拠点(MDPF)。集まったデータを蓄積・管理する。
つかう——DxMT(データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクト)。令和4年度に始まった9年間の事業で、データ駆動型の材料開発を進める。
中核にあるのがRDEというシステムだ。装置や研究のワークフローごとにテンプレートを設計し、メタデータを自動で抽出して、異なる装置のデータを統一的に管理する。
たとえば、成膜の条件、電子顕微鏡の画像、磁力計のデータが自動で紐づけられ、磁化曲線が描かれ、保磁力が自動計算されて記録される。
2026年3月末時点の実績は、こうだ。
ユーザー5,956人。データファイル411万2,336件。収録データ280万5,703件。構造化に対応した装置は、26機関1,030台。
論文を経由しないから、失敗した条件も残る。日々の研究から、生のまま蓄積されていく。
そして2025年9月30日、ARIMのデータ共用サービスは有償ライセンスの提供を始めた。
料金は、公共・アカデミア向けのシングルライセンスが年12,000円、一般が年24,000円。5人以上のグループなら年60,000円、一般は年120,000円。
NIMSはこれを「世界初、論文にない実験データを提供」するサービスと位置づける。特徴は3つ。AIフレンドリーであること。構造化済みであること。メタデータが豊富であること。
論文にならなかったデータに、値段がついた。
それは、データの意味が変わったということでもある。
「全面公開」か「全面非公開」か——その二択を捨てる
オープンサイエンスの理想からすれば、研究データはすべて公開されるべきだ。
だが現実には、企業の製造ノウハウが混じる。知財になりうる情報が含まれる。全部を出せと言われれば、誰も出さなくなる。
かといって全部を閉じれば、AIは学べない。
NIMSの技術開発・共用部門長である出村雅彦氏は、2026年5月の文科省の会合で、この二項対立を超える枠組みを示している。
三層である。
オープン——学術基盤、国際貢献、ベンチマークとして使うデータ。
広域シェア——認証と利用管理のもとで、産学官のコミュニティ内で共有するデータ。一定期間の秘匿(エンバーゴ)が明けた作業データも含まれる。
クローズド——機関内にとどめるもの。知財保護、製造ノウハウ。
資料は、全面公開か全面非公開かではなく、産学官での共有や一部のベンチマーク化といった戦略的な共有が重要だと指摘する。
この「広域シェア」という中間層が、新しい。
誰にでも渡すわけではない。だが、閉じ込めもしない。信頼できる相手の輪の中で回す。
背景には、切実な事情もある。
資料は、材料データをめぐる国際競争が学会や出版社を巻き込んで激化していると述べ、対応としてスクレイピング制限とライセンス提供を挙げている。
自分たちが苦労して整えたデータが、無断で吸い上げられ、他所のAIの学習に使われる。それを防ぎつつ、必要な相手には渡す。
公開の作法そのものが、設計対象になっている。
NIMSとIBMが組む意味
2026年7月16日、つくば。NIMSと日本IBMは覚書を締結した。
協業の領域は3つ。
第一に、基盤モデル、LLM、エージェント技術を含む先進AI技術と数理アルゴリズムを、材料分野へ応用すること。
第二に、材料研究への量子コンピューティングの応用可能性を探ること。
第三に、データ統合とインフラ整備を通じて、材料科学の研究基盤を構築すること。
IBM側は、2025年に発表した「IBM Material DX」を核とする材料探索技術を持ち込む。NIMS側が持ち込むのは、PoLyInfo、AtomWork-Adv.、Kinzoku、RDEといった大規模データ基盤である。
NIMSのデータベースの規模を、いくつか挙げておく。
無機材料の結晶構造が409,723件。状態図が49,650件。物性データが568,195件。金属・合金の機械的性質が158,380件。ポリマーが31,160件。
これらは、何十年もかけて積み上げられてきたものだ。一朝一夕には作れない。
生成AIのモデルは、資金と計算資源があれば作れる。だが、実験データは時間と手間でしか作れない。
つまり、この協業でNIMSが差し出しているのは、金では買えない側の資産である。
両者は今後、具体的なプロジェクトの構想策定に入る。
急いで成果を出す話ではない。長期的な観点から議論を進める、という言い方が、覚書の性格をよく表している。

当マネージャー)、武田 征士(日本 IBM 東京基礎研究所 主席研究員)、福田 剛志(日本 IBM 執行役員 研究開
発担当 兼 東京基礎研究所所長)、宝野 和博(国立研究開発法人 物質・材料研究機構 理事長)、
竹内 正之(国立研究開発法人 物質・材料研究機構 理事)、出村 雅彦(国立研究開発法人 物質・材料研究機構
技術開発・共用部門 部門長)、三橋 朗(日本 IBM 事業開発&ストラテジックアライアンス)
データは、参照情報から「戦略資源」になった
出村氏の資料には、データの位置づけの変化を整理した表がある。
データ時代以前。データは人が参照するものだった。検索して閲覧する。位置づけは、補助情報。
データ時代。AI解析や機械学習に使われるようになった。形はデータセット。位置づけは、学習資源。
そしてAI for Science時代。AIが知識を生成するために使われる。形はAIそのものや知識の提供。位置づけは——戦略資源。
「データがAI学習資源になったことで、バルクデータそのものが競争力を持つ時代に」
この一行が、いまの状況を的確に言い当てている。
かつて、データは論文の付録だった。いまは、データが本体になりつつある。
同時に、課題も明確になっている。資料は3つを挙げる。
専門知識やツールの習得コストが高いこと。材料の設計空間は極めて広大で、目的に直接合うデータは限られること。そして、探索・前処理・解析の負担が大きいこと。
データがあっても、使えなければ意味がない。
だから次の段階は「データ提供から知識提供へ」だという。自然言語でデータを検索・解析できるAIエージェント。広範な材料データを横断的に学習し、まだ測っていない領域を推定するマテリアル基盤モデル。
IBMとの協業は、まさにこの部分を狙っている。
データを積む段階から、データに答えさせる段階へ。
その移行が、いま始まっている。
インフラは、地味な作業でできている
道路も、水道も、電線も、できてしまえば当たり前になる。
誰が測量し、誰が掘り、誰が繋いだのかは、忘れられる。だが、それがなければ何も動かない。
科学のインフラも同じだ。
論文のグラフをスクリーンショットで取り込み、軸を入力し、点をクリックする。装置ごとにテンプレートを設計し、メタデータの項目を決める。物理的におかしい値を見つけて弾く。
華やかさはない。論文の被引用数も伸びにくい。
だが、この作業の総量が、その国の科学の底力になる。
生成AIの性能競争は、モデルのパラメータ数や推論速度で語られる。分かりやすいから、ニュースにもなりやすい。
その裏側で、もうひとつの競争が進んでいる。
誰がデータを蓄積するのか。誰がそれを標準化するのか。誰と、どこまで共有するのか。
この問いに答えを持っている国と、持っていない国の差は、5年後、10年後に効いてくる。
AIに「良いデータ」を食べさせよう。
それは、良いAIを作ることと同じくらい、あるいはそれ以上に、難しくて、重要な仕事である。
23万件の実験値。411万件のデータファイル。1,030台の装置。
数字の裏には、グラフの点を一つひとつクリックし続けた人たちがいる。
地球をメンテナンスする技術も、それを支える科学も、結局のところ、こうした地味な手入れの積み重ねの上に立っている。
【参考】
NIMS:プレスリリース(NIMSとIBM、生成AIを活用した次世代材料研究基盤の構築に向けた協業に合意/2026年7月1日)
https://www.nims.go.jp/press/
Starrydata
https://starrydata.nims.go.jp/
Starrydata:無機材料科学実験データのオープンデータベース構築プロジェクト
https://starrydata.org/
DxMT(データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクト)
https://dxmt.nims.go.jp/
DxMT:「DxMTシンポジウム2026:AI for Scienceによるマテリアル開発の革新」(2026年8月17日開催)
https://dxmt.nims.go.jp/news/4340
文部科学省:マテリアル分野におけるデータ基盤 蓄積から活用に向けた課題(NIMS 出村雅彦/2026年5月)
https://www.mext.go.jp/content/20260522-mxt_jyohoka01-000050160_3.pdf
STAM編集室(NIMS):最先端材料科学研究:新たなデータベースで電子材料のイノベーションを加速(NIMS/村田製作所)
https://kyodonewsprwire.jp/release/202505028325
FAQ
Q. NIMSと日本IBMは、何に合意したのですか?
A. 2026年7月16日、生成AIを活用した次世代の材料研究基盤の構築に向けて覚書(MOU)を締結した。協業の領域は、基盤モデル・LLM・エージェント技術など先進AIと数理アルゴリズムの材料分野への応用、量子コンピューティングの応用可能性の探索、そしてデータ統合とインフラ整備を通じた研究基盤の構築の3つである。
Q. Starrydataとは何ですか?
A. NIMSが運営する材料科学の実験データのオープンデータベースである。論文に掲載されたグラフから数値を抽出し、23万件を超える実験データを蓄積している。熱電材料、磁性材料、誘電材料、圧電材料、電池材料など幅広い分野を対象とし、営利・非営利を問わず無償で利用できる。
Q. なぜ論文のグラフを数値に戻す必要があるのですか?
A. 論文に印刷されているのは絵であり、機械が読める数値ではないためである。人間はグラフを見て性質を読み取れるが、AIが学習するには数値の形が要る。Starrydataは独自開発したソフト「StarryDigitizer」を使い、人手とAIを組み合わせてこの変換を行っている。
Q. 「失敗データ」が重要なのはなぜですか?
A. 論文になるのは成功した実験がほとんどで、うまくいかなかった条件の記録は公開されにくい。しかしAIが良し悪しの境界を学ぶには、失敗の記録が欠かせない。日本のマテリアルDXプラットフォームは、論文を経由せず日々の研究から直接データを蓄積することで、この偏りを補おうとしている。
Q. マテリアルDXプラットフォームとは何ですか?
A. 文部科学省が進める材料研究のデータ基盤事業で、「つくる(ARIM=マテリアル先端リサーチインフラ)」「ためる(データ中核拠点)」「つかう(DxMT=データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクト)」の三層で構成される。DxMTは令和4年度に始まった9年間の事業である。
Q. どれくらいのデータが集まっているのですか?
A. データ管理システムRDEの2026年3月末時点の実績は、ユーザー5,956人、データファイル411万2,336件、収録データ280万5,703件。構造化に対応した装置は26機関1,030台にのぼる。NIMSのデータベースには、無機材料の結晶構造409,723件、物性データ568,195件などが収録されている。
Q. データが有償になったのはなぜですか?
A. 2025年9月30日、ARIMのデータ共用サービスは有償ライセンスの提供を開始した。料金は公共・アカデミア向けのシングルで年12,000円、一般で年24,000円。論文には載っていない実験データを、構造化済み・メタデータ付きで提供するもので、データそのものが価値を持つ時代への対応と位置づけられている。
Q. 「広域シェア」とは、どういう考え方ですか?
A. データを全面公開するか全面非公開にするかの二択ではなく、その中間を設ける枠組みである。認証と利用管理のもとで、産学官のコミュニティ内で共有する。学術基盤として広く公開する「オープン」と、知財や製造ノウハウを守る「クローズド」のあいだに位置づけられる。
Q. AIが材料を予測できれば、実験は不要になりますか?
A. ならない。2023年にGoogle DeepMindが発表したGNoMEは220万件の新しい結晶構造を予測し、うち38万件を安定と判定したが、実際に合成できるか、狙った性能が出るかは作って測らなければわからない。そして、その結果が次のAIを賢くする。予測と実験は循環の関係にある。
Q. 今後、何が変わっていくのですか?
A. データを積む段階から、データに答えさせる段階への移行が進む。自然言語でデータを検索・解析できるAIエージェントや、広範な材料データを横断的に学習してまだ測っていない領域を推定する「マテリアル基盤モデル」の開発が課題として掲げられている。データ提供から知識提供へ、という転換である。
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