★ここが重要!

★要点
カナデビアが11月1日に仮想展示施設「Kanadevia Virtual Museum」を一般公開。ごみ焼却発電、メタネーション、洋上風力、海底フラップゲートの4分野を、メタバース上で実寸スケールに近い没入体験として開放。物理的見学の制約を超え、産業インフラの“不可視部分”を学びと対話の資源に変える。
★背景
エネルギー転換・資源循環・防災強靭化の要となる大型設備は、遠隔・非公開・高コストで市民から見えにくい。透明性と理解の不足は、社会実装のブレーキになり得る。DXとXRを活用し、供給側と生活者の情報非対称を縮める試みが、合意形成と市場形成を押し上げる転換点。

“見せられないから伝わらない”時代は、もう引き延ばせない。カナデビアはメタバースに常設の博物館を立ち上げ、発電・資源化・防災インフラの内部を公開した。遠く、巨大で、複雑——だからこそ理解に時間がかかる設備群を、手のひらのデバイスに縮約し、実寸に近い体感で解きほぐす。合意形成のボトルネックは情報の非公開ではなく、体験の不在だったのかもしれない。

不可視を可視化する、設備の“中”まで届く展示設計。

公開されるのは、ごみ焼却発電プラント、メタネーション装置、洋上風力発電設備、海底設置型フラップゲートの4点。点在・非公開・巨大ゆえに“見にくい”対象を、炉の断面やごみピット、海中ゲートなど内部から観察可能に組み替えた。
展示はclusterのワールド上に構築。PC・スマートフォンの2D閲覧に加え、HMDで3D没入すればスケール感が跳ね上がる。産業機器の“質量”を、身体感覚に落とし込む仕立てだ。

インフラの民主化——“理解コスト”を下げる社会的ROI。

エネルギー転換と循環経済の議論は、設備の実像を共有できるかどうかで速度が変わる。搬送ルート、騒音源、熱回収、排ガス処理、維持管理の導線——机上の説明では届きにくい論点が、空間体験なら数分で腹落ちする。
見学の平準化は、採用・教育・調達にも効く。新人研修や学校授業、自治体の住民説明、海外顧客の案件形成まで、移動も装備も最小で回せる。理解の初期コストを下げることは、合意形成と市場開拓の“共通投資”だ。

メタバース内の洋上風力発電施設

環境・防災の共通言語「ごみ発電×メタネーション×洋上風力×フラップゲート」

温室効果ガス削減とレジリエンス強化の現場は、縦割りでは動かない。ごみ焼却の発電・熱利用、CO₂とH₂からメタンを合成するメタネーション、出力変動の大きい洋上風力、高潮を制御する海底フラップゲート。
エネルギー・資源・防災を横断して“つながり”を体験できる場は希少だ。都市スケールの複合解を提示し、単体設備の是非を超えて、システムとしての整合性と限界を議論できる。メタバースは、部門間の強力な翻訳装置になる。

アクセスは世界同時——包摂性と可搬性。

インターネット環境があれば世界中どこからでも入館可能。VRデバイス、PC、スマートフォンに対応し、料金は無料。現場に行けない人——距離、時間、年齢、身体状況——の排除が薄まる。
多言語化やアクセシビリティUIの拡張余地は大きい。音声解説、手話アバター、読み上げ最適化、専門度に応じた導線選択。“広く開く”ことは“深く伝える”ことの前提だ。
10月14〜17日のCEATEC 2025(幕張メッセ)では、HMDを用いた先行体験を提供。高集客イベントで“初めての没入”を配り、11月1日の一般公開で“学び直しの場”に戻ってもらう導線だ。体験をベータ版として扱い、来場者の動線データとフィードバックを反映させれば、公開初日からの学習曲線が立ち上がる。

カナデビア社内体験会の様子

“展示で終わらせない”——データと合意形成の設計。

本丸は運営だ。展示の閲覧ログと質問傾向、滞在時間、離脱点、議論のテーマをダッシュボード化し、次の説明資料や住民対話に即還流させる。公開後は、装置別に“誤解されやすい点”のFAQ、自治体・教育機関向け授業パッケージ、外国語版ガイドを積み増すべきだろう。
評価軸も更新する。KGIは受注や訪問数に加え、理解度の自己評価、反対理由の変化、合意形成に要する会議回数の減少。XRは“わかるまでの時間”を短縮する技術だ。
スケールする条件は三つ。第一にオープン規格。設備の3Dモデルやプロセス記述の共通仕様を定め、他社設備も“同じ博物館”に並べられるようにする。第二に第三者レビュー。大学・自治体・NGOが監修する注釈層を用意し、展示の信頼性を担保する。第三に連携API。環境センサーや運転データ(匿名化・集約)を仮想空間に流し、“止まった模型”から“生きた設備”へ。
“見える化”を継続運用に接続できた時、メタバースは広報ではなく社会実装の装置になる。

【公開情報】
・一般公開開始:2025年11月1日
・プラットフォーム:cluster「Kanadevia Virtual Museum」
・対応デバイス:VR(Meta Quest、VIVE)、PC(Windows/Mac)、スマートフォン(iOS/Android)
・料金:無料
【先行体験】
・CEATEC 2025:10月14日(火)〜17日(金)/幕張メッセ(ホール6、6H170)

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