鹿児島県に拠点を置くAGRIST株式会社が、スマート農業の推進を目指し、AI技術を駆使した収量予測システムの開発に成功した。これは、MicrosoftのAI Co-Innovation Labの支援を受けて行われ、農業分野におけるAI活用の新たな一歩として注目を集めている。

100年先も続く持続可能な農業をAIとともに目指す、農業DXの新旗手AGRIST(宮崎県新富町)

AGRISTは、宮崎県新富町に本社を構える企業で、AIや収穫ロボットを活用した農業DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を行っている。同社は、Microsoft AI Co-Innovation Lab KobeのSprint開発支援プログラムを活用し、Azure Machine Learning Studioを用いた高精度な収量予測AIの開発を進めてきた。開発には、これまで同社が鹿児島県の自社農場で蓄積してきた約5万件に及ぶ環境データと収穫量データが使用され、収量予測モデルの精度が飛躍的に向上した。
5日間のプログラムでは、Microsoftのエンジニアからデータセットの構築方法や欠損値補完のアイデアが提供され、AGRISTのエンジニアはデータの前処理を実施した。これにより、データの質が大幅に向上し、高精度な収量予測モデルが完成した。このモデルは、収量の増減傾向を正確に捉えることができ、農業分野でのAI活用の可能性を大いに感じさせる結果となった。
神戸に位置するMicrosoft AI Co-Innovation Labは、AI技術の研究とイノベーションを推進するための最先端の設備を備えており、AGRISTのエンジニアはこのラボでの開発を通じて、最新のAI技術を駆使したプロジェクトを体験した。特に、データサイエンスの知見を深めることができた点が、同社にとって大きな成果となった。AGRISTは、ラボでの開発活動を通じて、収量予測AIの精度を高めるためのデータの前処理やモデルのチューニングに関する具体的なアドバイスを受け、開発プロセスの効率化を図ることができた。
AGRISTは、今回開発した収量予測AIをベースに、今後も農業データの収集を進め、より精度の高い予測モデルの開発に取り組む予定だ。また、同社は収穫ロボットの開発も手掛けており、カメラで撮影した作物の画像を解析し、収量予測モデルに組み込むことで、さらなる予測精度の向上を目指している。さらに、施設園芸ハウス内の統合環境制御技術の自社開発も進めており、ハウス内の様々な環境データを任意の形式や頻度で取得することが可能になる。AGRISTは、これらの技術を通じて農業の効率化と生産性向上を目指し、持続可能な農業の実現に向けた取り組みを強化していく。
AGRISTは、これまでもMicrosoftとの連携を通じて、AI技術を農業に活用する様々な取り組みを行ってきた。スタートアップ支援プログラム「Microsoft for Startups」に採択され、Azure OpenAI Serviceを活用したLINE版農業アシスタント「あぐりすたんと」の開発や、MicrosoftのCEOであるサティア・ナデラ氏が基調講演でAGRISTを紹介するなど、AI技術を活用した農業の進化に寄与している。AGRISTのエンジニア統括最高責任者である清水秀樹氏は、「AI Co-Innovation Labでの開発は、AGRISTにとって非常に貴重な経験となった」とコメントしており、今後もMicrosoftとのパートナーシップを活用し、より高度なAIソリューションの開発に取り組んでいく意向を示している。
AGRISTは、AI技術を活用した収量予測AIの開発を皮切りに、農業の効率化と持続可能な生産システムの確立を目指している。同社は、データの蓄積と解析を進め、モデルの改良と精度向上を図りながら、スマート農業の分野で革新的なソリューションを提供していくことを目指している。


詳しくはホームページで