グローバルなディープテック起業家たちの新たな拠点が、東京・渋谷に誕生した。東急不動産とスクラムスタジオが運営するアクセラレーター「Sakura Deeptech Shibuya Accelerator(SDS)」が本格的なスタートを切り、オックスフォード大学発の投資機関やMITの教授陣など、世界最高水準の知と資本が交錯する実証の舞台が動き始めた。

世界28カ国から精鋭10社を選出、半年間の共創プログラムが始動。
東急不動産とスクラムスタジオが共同で推進するディープテック・アクセラレータープログラム「Sakura Deeptech Shibuya Accelerator(以下SDS)」が、2025年6月より正式に稼働した。会場は渋谷駅前に竣工したばかりの複合開発施設「渋谷サクラステージ」。都市再開発とイノベーション創出が交差するこの空間に、世界28カ国から厳選されたディープテックスタートアップ10社が集結し、半年にわたる共創プログラムが始まった。
今回採択された10社は、AI、ロボティクス、気候テックといった先端分野でグローバルな課題解決に挑む企業群だ。たとえば、シンガポールのEdgenesisはIoTの相互運用性課題に挑み、米国のNovathenaは独自AIでミスのないオペレーションを目指す。また、イスラエルのVeroboticsは完全自動の建物外装点検ロボットを開発するなど、分野横断で未来を変える技術が揃っている。
国内からはEX-Fusion(レーザー核融合)、海外からはImpossible Metals(海洋金属採取AI)、Thermulon(断熱エアロゲル)など、地球環境とエネルギー課題に挑む気候テック企業も複数参画。日本企業と海外スタートアップが交差し、相互に学び合い、共創する設計となっている。
MIT教授、オックスフォード大学発VCが参加、グローバルメンター陣も続々参画。
SDSの強みは、世界最高水準の知見とネットワークを有する支援体制にある。プログラムのキックオフイベントでは、MIT教授で起業家としても実績をもつDesirée Plata氏とHermano Igo Krebs氏が来日し、研究とビジネスの架け橋として次世代の起業家を指導した。
さらに、オックスフォード大学発の投資機関「Oxford Science Enterprises」が新たにパートナーとして参画したことも注目に値する。同機関は欧州のディープテックスタートアップ支援をリードする存在で、日本発の起業支援プログラムとの連携は、国際的な資本循環を渋谷から生み出す起点になるだろう。
国内外の大学機関、自治体、ベンチャーキャピタル、そして大手企業も参加し、半年間にわたる伴走支援を提供。2025年12月には、成果発表の場「Demo Day 2025」の開催も予定されており、世界中の投資家や事業会社が渋谷に集う機会となる。
IOWN導入で次世代都市実証、渋谷から世界へ広がるイノベーションの胎動。
本プログラムの舞台になる「SAKURA DEEPTECH SHIBUYA」は、NTT、NTTドコモ、NTT東日本が参画し、革新的通信インフラ「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」の導入が進む。これにより、5Gを超える高速通信によるリアルタイム遠隔操作や超高精度センシングなどの実証が可能となり、都市空間を活用した未来志向の社会実験が動き始めた。
また、東急不動産が運営する「SHIBUYA SACS」では、2025年7月にNTTグループの最新技術を体験できる展示イベント「つながるっ展」の開催も決定。こうした都市実証の取り組みは、SDSに集うスタートアップにとっても、技術検証と社会実装の好循環を生み出す強力な土壌になるだろう。
