★ここが重要!

★要点
遮熱塗料「ミラクール」の施工で減ったCO₂を、算定・評価してカーボンクレジットとして発行できる「方法論」を、シロキコーポレーションとミラクールが共同で確立したという。改修の省エネが“証明できる価値”に変わる。
★背景
建物の脱炭素は「新築の高性能化」だけでは足りない。全国にある既存ストックをどう減らすかが本丸だが、改修の効果は見えにくく評価されにくかった。いま、排出削減に“価格”を付ける流れ(カーボンプライシング)が進み、削減量の見える化=MRVが競争力になる。

暑い。長い。しかも電気代は軽くならない。近年の夏は、体感だけでなく社会インフラとしての危機になった。そこで注目されてきたのが、屋根や外壁に塗って熱の侵入を抑える「遮熱塗料」だ。ただし、ここまでは“コスト削減”の話だった。今回のニュースは、その一段先を狙う。遮熱塗料によるCO₂削減量を測り、第三者が扱える「カーボンクレジット」に変える方法論が整ったという。建物改修は、節約から“価値創出”へ。勝負の論点が変わり始めた。

改修の省エネは、なぜ評価されにくかったのか?

既存建物の改修は、即効性がある。工場、倉庫、学校、病院、ホテル…、全国に広がるストックに手を入れれば、短期でエネルギー消費を下げられる。だが現実には、改修が社会的に十分評価されてこなかった。理由はシンプルで、「どれだけCO₂を減らしたか」を第三者が検証できる形に落とし込みにくかったからだ。
節電や温熱改善の効果は現場には見える。しかし、クレジットにするには“見える”だけでは足りない。算定のルール、データの取り方、比較の基準、検証の仕組み——要するにMRV(測定・報告・検証)という共通言語が必要になる。ここが整わない限り、改修は「いいこと」止まりで終わってしまう。

遮熱塗料の削減量をクレジットへ

シロキコーポレーションとミラクールが共同で確立したのは、遮熱塗料「ミラクール」の施工によって得られるCO₂削減効果を算定・評価し、カーボンクレジットとして創出するための方法論だという。ポイントは“世界初”をうたう派手さではない。削減量の計測と評価を、誰もが追試できる形に落としたことにある。
そして、発行先として挙がるのが、Linkholaが運営するクレジット発行プラットフォーム「EARTHSTORY」だ。審査・発行の器があることで、改修の環境価値が流通可能な形になる。
“塗って涼しい”から、“塗って削減し、削減を売れる”へ。建物改修が金融とつながる回路が開く。

カーボンに値札が付く時代。節電とESGの間に「換金可能な削減量」

カーボンクレジットは乱暴に言えば、削減量に値札を付ける装置である。排出に価格を付け、行動を変えるというカーボンプライシングの文脈にも重なる。
企業側から見ればメリットは二つある。第一に、改修投資の説明がしやすくなること。「空調費が下がった」だけでなく、「CO₂を何トン減らし、その価値をどう扱ったか」まで語れる。第二に、脱炭素の選択肢が増えること。工場の屋根、物流倉庫、店舗——“難工事ではない改修”がクレジットの入口になれば、現場は動きやすい。
自治体にとっても、公共施設改修が“目に見える成果”になる可能性がある。暑熱対策と脱炭素を一体で進める切り札にもなるだろう。

「クレジット化」の落とし穴を避けるチェックリスト

ただし、クレジットは魔法ではない。むしろ、ここからが本番だ。
鍵は三つある。
①追加性(やらなければ起きなかった削減か)
普及が進んだ技術ほど、「それは普通にやったのでは?」と問われる。方法論が、追加性の扱いをどう設計するかで信頼が決まる。
②データの質(測り方がブレないか)
遮熱は気象条件、稼働状況、設備更新などの影響を受ける。だからこそ測定・比較のルールが必要で、ここが弱いと“削減の水増し”と見なされかねない。
③社会実装(誰が、どれだけ、回せるか)
仕組みが整っても、手続きが重ければ広がらない。創出支援のデジタル化が進むのは、この摩擦を減らすためでもある。
結局、クレジットの価値は「信用」に尽きる。唯一無二を名乗るなら、なおさら検証耐性が問われる。
建物の脱炭素は、派手な新築競争ではなく、地味な改修の積み上げで決まる。遮熱塗料のクレジット化は、その地味さに“経済のエンジン”を付ける試みだ。暑さが常態になり、電力が不確実になり、カーボンに値札が付く時代。屋根に塗る行為が、財務と環境の両方に効く。そんな世界線が現実味を帯びてきた。

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