
★要点
アパートメントホテル「MIMARU」が、住友商事のインバウンド向け衣料シェアリングサービス「Any Wear, Anywhere」に参画。訪日家族旅行者向けに、季節に合わせた衣類セットをホテルで受け取れるサービスを開始する。スーツケースを減らすことで移動の負担を軽減し、CO2排出量も削減する“サステナブルな手ぶら旅”を提案する。
★背景
円安を追い風に急増する訪日外国人旅行者。しかしその裏側では、大きなスーツケースを抱えた移動の困難さや、旅先で不要になった衣類の廃棄といった課題が顕在化している。所有から共有へという価値観の変化は「旅」にも及んでおり、環境負荷を低減しつつ、より身軽で快適な旅行体験を求めるニーズが高まっている。
旅の荷物は、もっと軽くなる。アパートメントホテル「MIMARU」と住友商事が、そんな新しい旅の形を提案する。日本に着いたら、ホテルで季節に合った服を受け取り、旅が終われば返却するだけ。もう、気候の違う国のために分厚いコートをスーツケースに詰め込む必要はない。衣類のシェアリングという選択肢が、訪日旅行者のストレスを解放し、地球の負担も軽くする。
スーツケース問題——訪日家族が抱える「見えない負担」
日本の四季を楽しみたいと願う訪日家族旅行者にとって、衣類の準備は大きな頭痛の種だ。特に、熱帯地域から冬の日本へ来る場合、かさばる冬服だけでスーツケースは一杯になる。大家族なら尚更だ。満員電車や駅の階段で大きな荷物を抱えて移動する負担は、旅の楽しさを半減させる。さらに、旅の途中で購入した服や、帰国時には不要になる衣類の廃棄も、無視できない環境問題となっている。 こうした「旅のストレス」を解決するため、宿泊客の9割が訪日家族という「MIMARU」は、これまでも手荷物配送サービスなどを展開してきた。そして今回、衣類そのものをシェアするという、より本質的な解決策に乗り出した。
“着る”をシェアする「Any Wear, Anywhere」
この取り組みの核となるのが、住友商事が展開する衣料シェアリングサービス「Any Wear, Anywhere」だ。利用者は、訪日前にオンラインで季節や目的に合わせた衣類セットを予約。ホテルにチェックインすると同時に、清潔で質の高い服を受け取れる。 今回、MIMARUでの提供にあたり、子供服のサイズやアイテム構成を大幅に拡充。家族全員分のコーディネートが手軽に揃う。利用者は、服選びやパッキングの手間から解放され、空いたスーツケースのスペースでお土産をたくさん買うこともできる。そして、旅が終われば服を返却するだけ。CO2排出量の削減にも繋がり、まさにサステナブルツーリズムを体現する仕組みだ。


「所有」から「共有」へ。旅のスタンダードは変わるか
実際にこのサービスを利用した旅行者からは、「冬服がかさばるので費用対効果が良い」「スーツケースに余裕ができて買い物が楽しめた」といった好意的な声が寄せられている。清潔さや品質への満足度も高い。 MIMARUは、2026年3月までのトライアル期間で得られた利用データやユーザーの声を元に、今後の本格展開を検討していく。衣食住の「衣」をシェアリングするというこの試みは、単なる利便性の向上に留まらない。モノを「所有」せず、必要な時に「共有」するという価値観を、旅という非日常体験を通じて世界に発信する。未来の旅のスタンダードが、ここから生まれるかもしれない。
MIMARU公式サイト: https://mimaruhotels.com/
サステナビリティページ: https://mimaruhotels.com/sustainability/
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