世論調査会社イプソスが実施した国際調査「人類と気候変動レポート2025」によると、気候変動への危機感や行動意欲について、日本人の意識が著しく低下していることが明らかになった。個人、政府、企業いずれのレベルでも気候変動対策への期待値は他国に比べて低く、32か国中すべての主要指標で最下位という結果が示された。

行動意欲、政府・企業への期待、すべてが最低水準。
気候変動がもたらすリスクに対し、どのような主体が責任を持ち、行動すべきかを問う本調査は、世界32か国の約2万4000人を対象にオンラインで実施された。その結果、日本では「個人が今すぐ行動しなければ、次世代を裏切ることになる」と答えた人が全体の40%にとどまり、調査対象国中で最も低かった。

この数値は、2021年の同調査と比較して19ポイント減少しており、意識低下の度合いも調査国中最大であった。イプソスはこの傾向を「短期間での危機感の急激な希薄化」と分析している。

また、「政府が気候変動対策に取り組まなければ、国民の期待を裏切ることになる」「企業が対策を怠れば、従業員や顧客の期待を損なうことになる」との問いに対する日本人の同意率も、いずれも最下位となった。個人の行動だけでなく、政策や産業界に対する期待までもが極めて低い状況が浮き彫りとなっている。


一方で、日本国内における気候変動の影響を「懸念している」と回答した割合は81%に達し、前回調査から12ポイント上昇した。懸念は高まりつつあるにもかかわらず、行動への結びつきが弱いという、ねじれた構図が浮かび上がった。

同様の傾向は他国でも見られ、調査対象となった27か国のうち18か国で「気候変動への懸念」が前回調査を上回った。とりわけフィリピンやトルコといった気候リスクの高い地域で懸念が顕著に増加している。
イプソス日本法人の代表取締役社長・内田俊一さんは、「今回の結果は、日本社会における気候変動問題への関心がいかに低下しているかを明示するものだ。アースデイを契機に、再び一人ひとりの意識と行動を問い直すべき時期に来ている」と述べている。
本調査は、2025年1月24日から2月7日にかけて実施されたもので、国際的な比較指標として活用されている。今後も継続的な調査と発信が求められる中、日本社会の意識変容の兆しがどこに現れるのかが注目されている。