京都大学と京都工芸繊維大学の研究グループが、植物バイオマスの主成分であるリグニンに結合する合成ポリマーの開発に成功した。これにより、リグニンの分解・分離技術が飛躍的に向上し、バイオマス資源のさらなる活用が期待される。本研究成果は、国際的な科学誌に掲載され、サステナブルな社会実現に向けた大きな一歩となる。

リグニンの分解・分離を可能にする新たな合成ポリマー

植物バイオマスの有効活用は、持続可能な社会の構築において重要な課題である。特に、植物細胞壁を構成するセルロース、ヘミセルロース、リグニンのうち、リグニンは構造が複雑で分解が難しく、利用が進んでいなかった。
今回、京都大学と京都工芸繊維大学の研究チームは、リグニンに結合する合成ポリマーを開発し、その特性を解析した。リグニンと結合するポリマーの発見により、リグニンの効率的な分解・分離が可能となり、バイオマス由来の化学品や燃料の生産への応用が期待される。
研究チームは、短時間で多くのポリマーを試験できるスクリーニング方法を開発し、96サンプルをわずか6秒で分析する技術を確立した。この手法を用いてリグニンと強く結合するポリマーを探索した結果、トリプトファンやフェニルアラニンなどのアミノ酸を含むポリマーが特に高い結合性を示した。
この技術により、リグニンと結合するポリマーの特性を迅速かつ高精度に評価できるようになった。さらに、合成ポリマーがリグニンに対して強固な結合を示すことを、表面プラズモン共鳴(SPR)装置を用いた実験で確認した。

リグニン活用の未来—持続可能な循環型社会への貢献

リグニンに結合するポリマーの開発により、リグニン分解酵素や人工触媒と組み合わせることで、リグニンの効率的な分解が可能となる。これにより、植物バイオマスから化学品やバイオ燃料を生産する技術がさらに発展し、化石資源に依存しない持続可能な産業の実現が見込まれる。
また、本研究成果は、バイオマス資源の分離・精製技術にも応用可能であり、セルロース、ヘミセルロース、リグニンを効率的に利用する新たな循環型社会の形成に寄与するだろう。今後、さらなる研究と実用化に向けた取り組みが進むことで、バイオマス資源の可能性が一層広がることが期待される。
研究成果の詳細は、国際学術誌「Macromolecular Rapid Communications」および「RSC Sustainability」に掲載され、両誌の表紙にも採用された。

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