建築現場で発生する未使用や中古の建材は、仕様の違いや保管スペースの問題から“ゴミ”として廃棄されてきた。こうした業界の慣習に対し、建築設計や地域再生に取り組むTSUDA CONSTRUCTION COMPANY(大阪市)は、新たな資源循環の拠点として「解体百貨店 建築建材 ハンガクヤ」を徳島県三好市に2025年8月1日に開業する。旧佐野小学校の廃校舎を再活用したこの施設は、サステナビリティと地方活性を両立する新しい建材流通のモデルになりそうだ。

新品建材が「廃棄」される構造的矛盾に、地方から切り込む挑戦。

「なぜ捨てるのか」ではなく、「なぜ活かさないのか」。そんな逆転の発想が「ハンガクヤ」開業の原点だ。
建築の現場では、工期のズレ、設計変更、仕様違いなどの理由で使われなかった建材が数多く発生する。未使用でありながら廃棄されるその量は、実に膨大。断熱材、外壁材、タイル、建具など、いずれも新品にもかかわらず、焼却や埋設処分の対象になってきた。さらに解体現場では、取り外せば十分に再利用できるドアや収納棚、一枚板といった高品質素材までもが、再流通のルートを持たないがゆえに「産業廃棄物」として扱われているのが現状だ。
こうした業界の構造的課題に対して、TSUDA CONSTRUCTION COMPANYは“地方の目線”から新たな流通拠点を打ち立てた。徳島県三好市の山間にある旧佐野小学校の体育館を活用し、建築現場や解体現場で発生した新品・中古建材をアウトレット価格(半額以下)で販売する「ハンガクヤ」は、資源循環と地域再活性の双方を実現するサステナブルな社会装置。
この施設では、プロの目利きが建材を分類し、「未使用だが余ったもの」「再利用可能な取り外し品」「メーカー処分の見切り在庫」などを用途別に陳列。一点物の建材が並ぶ会場には、DIY愛好家や建築関係者、設計士など、幅広い層の来場が見込まれている。

単なる建材販売所ではない、資源循環型プラットフォーム。

ハンガクヤの構想は、単なるアウトレット販売にとどまらない。TSUDA CONSTRUCTION COMPANYでは、この施設を起点に「解体百貨店プロジェクト」として多角的な再流通サービスを展開していこうとしている。
具体的には、月1回の特売イベント「ハンガクイチ」、家具や什器を短期貸し出す「カシダシヤ」、中古建具や照明をリメイク販売する「アラタメヤ」、廃棄直前の建材を引き取る「ヒキトリヤ」、古道具に再び価値を与える「コブツヤ」など、建築資源を中心にしたローカル循環モデルの構築が基盤になる。
代表の津田直樹さんは「地方には、もったいないを活かす力がある」と語る。都市部では見過ごされがちな“余剰建材”の存在を、地方の手仕事と知恵で救い、新たな価値として還元する。この発想は、ただのリユースではなく、「未来の建築を変える運動」とも受け取れる。

建材流通の「新常識」を生む可能性も。

SDGsやサーキュラーエコノミーといったキーワードが叫ばれて久しい中で、実際の現場では“使い捨ての論理”がいまだ根強く残っている。ハンガクヤは、そのギャップを地方から埋めようとする試みと言えそうだ。
建築資材の再流通に関する法整備や基準の整備が進めば、この「ハンガクヤ」のような拠点が全国各地でさらに強く求められるようになるだろう。特に、地域に眠る廃校や空き家といった未活用資源との組み合わせは、建材だけでなく建築そのものの“再生”にもつながっていくかもしれない。
今後、ハンガクヤが地域と建築業界の橋渡し役としてどのような進化を遂げるのか。小さな廃校から始まったこの動きが、建築資源の「無駄ゼロ」時代の象徴となる可能性は十分にある。同拠点の開業を記念して、2025年8月1日から3日までの3日間、「建築建材 半額市」が開催される。このイベントでは通常価格よりさらに値引きされた目玉商品が放出される予定だ。

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