
★要点
陸前高田発のライフスタイルブランド「ura」が、これまで廃棄されてきたわかめの元茎をアップサイクルしたヘアケア商品のノンボトルパッケージを発売。環境負荷低減とリフィル文化の普及を目指し、一次産業の持続可能性と「自然と人が寄り添う暮らし」を提案する。
★背景
高齢化と後継者不足、気候変動による自然リスクに直面する日本の一次産業。膨大な生産廃棄物の活用が喫緊の課題となる中、地域資源の新たな価値創出と、消費者の環境意識向上を促す循環型ビジネスモデルが求められている。
豊かな海の恵みは、時に捨てられてきた。東日本大震災からの復興途上にある岩手県陸前高田市で、わかめ養殖漁師が立ち上げたブランド「ura」は、これまで廃棄されていたわかめの元茎に新たな命を吹き込む。天然由来成分のヘアケア商品として生まれ変わったそれは、さらにノンボトルパッケージへと進化。持続可能な一次産業と、環境負荷の少ない消費行動へ、静かな変革を促し始めた。
「浜の暮らし」から生まれた挑戦──漁師が描くアップサイクルの未来。
「ura」代表の三浦尚子は、2014年に陸前高田へ移住し、養殖漁師の道を選んだ。海と共にある暮らしの中で、彼女は一次産業が抱える生々しい課題と向き合ってきた。天候不順や海水温の変化といった自然リスクに加え、業界全体の高齢化と後継者不足は深刻である。日々の漁業現場で感じた切実な思いが、「ura」というブランドを誕生させた原動力だった。生産過程で生まれる廃棄物を資源へと転換するアップサイクルプロダクトを通じて、生産者と消費者が共に自然環境や一次産業の未来を考える「きっかけ」をつくりたい。それが三浦の願いだ。

廃棄される「元茎」に光を当てる──天然成分が織りなすヘアケア。
わかめ養殖において、これまで元茎は販売価値がないものとして大量に廃棄されてきた。しかし、三浦はこの元茎の中に秘められた新たな価値を見出す。試行錯誤の末、わかめエキスを主軸に、柚子、マジョラム、ローズマリーといった天然由来成分を90%近く高配合したシャンプーとコンディショナーが誕生した。化学成分や人工香料は極力抑え、春の海を思わせる爽やかな香りに仕上げている。単なる廃棄物利用にとどまらず、高品質な商品として人々の暮らしに寄り添う、まさに海の恵みの再定義だ。

ボトルから「ノンボトル」へ──環境負荷低減への次なる一手。
「ura」はこれまでボトル型パッケージで商品を展開してきたが、顧客からの「毎回ボトルで買うのはもったいない」という声に応え、この度ノンボトルパッケージを新たに投入した。これは単なる詰め替え品というだけでなく、消費者が「リフィル文化」に移行し、既存のボトルを再利用するスタイルを推奨するものだ。ボトルの製造・輸送・廃棄にかかる環境負荷を大幅に削減する狙いがある。スクラップ&ビルドが限界を迎える現代において、使い捨て文化からの脱却は必須。ノンボトルパッケージは、持続可能な消費行動への具体的な提案であり、地球環境への明確なメッセージといえる。

地域と地球をつなぐ「きっかけ」──広がる共感の輪。
「ura」の取り組みは、単なる商品開発にとどまらない。それは、一次産業の現場と消費者、そして地球環境との関係性を問い直す試みだ。廃棄物から価値を生み出すアップサイクル、環境負荷を最小限に抑えるノンボトルパッケージ、これらはすべて「自然と人が寄り添う暮らし」というビジョンに繋がっている。インスタグラムやECサイトを通じた情報発信は、このビジョンへの共感を広げ、生産者と消費者の垣根を越えた「仲間」を増やしていく。陸前高田の小さな浜辺から始まったこの挑戦は、現代社会が直面する持続可能性という大きな課題に対し、希望に満ちた一つの解答を提示している。
Instagram : https://www.instagram.com/ura_lifestyle/
EC : https://ura-lifestyle.stores.jp/
note : https://note.com/ura_lifestyle
あわせて読みたい記事

裁断くずも再利用!アップサイクルファッションの新境地「UpcycleLinoデニムカバーオール」

逆境から生まれたアップサイクル甘酒。耕作放棄地の山田錦で、夏の滋養強壮を。

コクヨ×ChopValue Japan「使用済み割り箸を活用したオフィス家具」