
★要点
TRIFE DESIGN率いる「ReTA BASE」が、市場回収したクリアホルダーと工場廃棄ペットボトルキャップを再利用した日本初のシート素材「ポリオレフィンクロス」を開発。アスクル、日本山村硝子、北辰化成工業との協業により、国内ですべての工程を完結させる循環モデルを実現した。
★背景
プラスチック廃棄物の有効活用が求められる中、単一素材へのリサイクルに留まらず、異素材を組み合わせた高付加価値化が必要とされている。金型不要で加工しやすいシート素材への転換は、用途を広げ、コストを抑える新たなリサイクルの解となる。
使い終わったクリアホルダーや、工場の隅で廃棄されるペットボトルキャップ。それらが姿を変え、軽量で水に強いシート素材として再び世に出る。TRIFE DESIGNが手掛ける「ReTA BASE」プロジェクトは、異業種4社の技術と回収網をつなぎ合わせ、日本初となるポリオレフィンクロスを開発した。金型に頼らず、国内で循環の輪を閉じる、プラスチック再生の新しい方程式だ。
異業種をつなぐ“糸”——回収から素材化までを国内で完結
プロジェクトの鍵は、役割分担の明確さと、それを束ねる意思にある。アスクルが回収したクリアホルダーと、日本山村硝子から出る廃棄キャップ。これらを北辰化成工業が細いテープ状の糸(フラットヤーン)に加工し、TRIFE DESIGNが全体を指揮して織り上げる。 素材の内訳は、経糸にバージン材、緯糸に再生材(クリアホルダー80%、キャップ20%)を使用。リバーシブルカラーのクロスは、軽量かつ防水性に優れ、バッグや雑貨などへの加工も容易だ。すべての工程を国内で完結させることで、輸送による環境負荷を抑え、トレーサビリティも確保した。顔の見える関係でつくる循環は、確かな品質への自信にもつながる。

金型はいらない——シート化が拓く用途の自由
従来、再生プラスチックの多くは、金型を使った樹脂成形品として生まれ変わってきた。しかし、金型製作には多額の初期投資が必要で、デザインの変更も容易ではない。 今回開発されたポリオレフィンクロスは、「シート(生地)」という形状をとることで、その制約を取り払った。縫製すればバッグになり、敷けばマットになる。金型代というハードルを越え、小ロット多品種のプロダクト開発が可能になる。硬いプラスチックを柔らかい素材へと変換する発想は、リサイクルの出口戦略を劇的に広げるだろう。

技術の壁を越える——混ざり合う素材の最適解
道のりは平坦ではなかった。市場回収品であるクリアホルダーをフラットヤーンにする前例はなく、品質の安定化は難航した。ペレットの成形温度、冷却のタイミング、異なる素材の配合率。北辰化成工業の現場で繰り返された試行錯誤が、均一な品質の糸を生み出した。 TRIFE DESIGNは、素材の特性を引き出しつつ、強度と柔軟性を両立させる製法を模索。アスクル、日本山村硝子との連携が、理論上のリサイクルを現実のプロダクトへと昇華させた。異業種がそれぞれの“現場”を持ち寄ることで、技術の壁は突破された。
「ReTA BASE」が見据える未来——自利利他の循環へ
ブランド名「ReTA BASE(リタベース)」には、「自利利他」の精神が込められている。自分の幸せと他人の幸せはつながっているという仏教用語だ。廃棄物を新たな価値に変えることは、環境への配慮であると同時に、関わる企業や使い手の豊かさにも直結する。 ストレッチフィルム、廃棄衣類に続く第3弾として登場した今回の素材。今後、このクロスを使った具体的なプロダクトが市場に並ぶ日も近い。素材(ペレット、ヤーン、クロス)としての外販も予定されており、他のクリエイターや企業がこのプラットフォームに参加する余地も残されている。 捨てられるはずだったものが、次の誰かの役に立つ。その当たり前の循環を、技術とデザインで加速させる。「ReTA BASE」の挑戦は、プラスチックの行方を明るく照らしている。

企業・ブランド情報
ReTA BASE(リタベース):株式会社TRIFE DESIGN運営
参画企業:アスクル株式会社、日本山村硝子株式会社、北辰化成工業株式会社
URL:https://trifedesign.com/
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