
★要点
石灰石から生まれた新素材「LIMEX」で知られるTBMが、家庭から出る使用済みプラスチック(PCR材)を原料に、新品のプラスチック(バージン材)を超える強度を持つ高機能再生材「CirculeX(サーキュレクス)」を開発。再生材の弱点だった「強度不足」と「臭い」の問題を、独自の配合・混錬技術で克服した。
★背景
プラスチック資源循環は世界の潮流だが、日本の廃プラ処理はいまだ焼却に大きく依存し、マテリアルリサイクル率は20%に留まる。特に、食品などが付着した家庭ごみ由来のPCR材は品質が安定せず、用途が限定的だった。高品質な再生材の需要が高まる中、PCR材を基幹材料へと昇格させる技術が、日本のサーキュラーエコノミー実現の鍵を握る。
家庭から出る、汚れて、混ざった、プラスチックごみ。その「やっかいもの」が、新品を超える性能を持つ“宝の山”に変わるかもしれない。新素材開発の風雲児・TBMが、使用済みプラスチック由来の再生材「CirculeX」を発表した。再生材の弱点だった強度不足と不快な臭いを克服し、建築資材から自動車部品まで、その用途を飛躍的に広げる。これは、日本のプラスチックリサイクルの常識を、根底から覆す挑戦だ。
なぜPCR材は嫌われたのか——強度不足と臭いの壁
プラスチックリサイクルには、大きく分けて2種類ある。工場で出る端材などを再生するPIR材と、私たちが家庭で捨てる使用済み製品を再生するPCR材だ。PIR材は品質が高く需要も旺盛だが、供給量が限られ価格も高騰している。一方、PCR材は豊富に存在するものの、様々な種類のプラが混ざり、食品の残り香などが付着するため、強度が低く、臭いが残りやすいという致命的な欠点があった。 そのため、これまでのPCR材の用途は、土木資材の充填剤など、品質がさほど問われない分野に限定されていた。強度と美観が求められる製品には、とても使えなかったのだ。

LIMEXで培った“混ぜる技術”が、弱点を強みに変える
この壁を打ち破ったのが、TBMが石灰石由来の新素材「LIMEX」の開発で培った、独自の配合・混錬技術だ。様々な特性を持つ素材をナノレベルで均一に混ぜ合わせ、新しい機能を生み出すノウハウ。これをPCR材に応用し、特殊な添加剤などを配合することで、再生材の弱点を克服した。 完成した「CirculeX」の曲げ強度は従来のPCR材比で約126%高く、バージン材比でも約47%高い。耐衝撃性は従来PCR材比で約176%高く、バージン材比でも約29%高い。さらに洗浄プロセスの改良で臭いの主因を約60%低減。耐衝撃性も同様だ。さらに、洗浄プロセスの改良により、不快な臭いを約60%も低減。これにより、これまで不可能だった家具や家電、自動車の内装材といった、高い品質と快適性が求められる製品への道が拓かれた。

横須賀から始まる、本格的な資源循環
TBMは、年内に横須賀サーキュラー工場で「CirculeX」の量産体制を構築する計画。家庭から出る、これまで価値が低いとされてきたプラスチックごみを、高機能な工業材料へと転換する一大拠点となる。 EUでは、再生材の使用を義務付ける規制が次々と導入され、再生プラスチック市場は世界的に急成長している。日本もその潮流から無縁ではいられない。「CirculeX」は、日本の製造業がグローバルな環境規制に対応し、国際競争力を維持するための、強力な武器となるだろう。使用済みプラスチックという“国内資源”を最大限に活用し、新たな産業を創出する。その壮大な挑戦が、今まさに始まろうとしている。
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