★ここが重要!

★要点
北海道で、おにぎり・弁当・サンドイッチ約60品の「製造回数」を1日3回から2回に集約。衛生レベル向上と鮮度延長を土台に、製造・輸送・フードロス・CO2を同時に最適化する実装に踏み込んだ。
★背景
人口減少と物流の人手不足、燃料・電力コスト、そして気候の極端化。サプライチェーンは「速く細かく回す」ほど強い時代ではなくなった。回数を減らしても品質を落とさない“設計力”が競争力になる局面だ。

コンビニの強さは、近さと速さだった。欲しい時に、欲しい量が、そこにある。その当たり前を、誰がいちばん苦労して支えてきたのか。工場での段取り替え、深夜の仕込み、長距離輸送、荷待ち、発注の読み違い——現場は「回数」で吸収してきた。
セブン‐イレブン・ジャパンが北海道で始めるのは、その“回数頼み”からの脱却である。おにぎり等の製造回数を1日3回から2回へ。いかにも地味だが、ここにはサプライチェーンの思想転換が詰まっている。

北海道は“難易度の高い教室”——長距離・雇用・効率の三重苦

北海道は、供給の難しさが凝縮された地域だ。店舗間の距離が長く、輸送は長距離になりやすい。需要の波も都市圏とは違う。製造工場側も、雇用面の課題を抱えやすい。
こうした条件下では、同じ品質を維持するだけでコストが跳ねる。だからこそ、全国に先んじた「新たな挑戦」として、製造回数削減が打ち出された。回数を減らす狙いは、製造効率と輸送効率の向上だけではない。フードロスとCO2まで含めて、チェーン全体の“目減り”を抑えることにある。

回数を減らすには、理由がいる。鍵は「衛生×鮮度延長」という土台

製造回数を減らすと、単純に不安が出る。欠品しないか。鮮度は落ちないか。美味しさは守れるのか。
今回の取り組みが成立する前提として、産学連携による新技術の活用で、原因菌の特定と汚染経路の調査が可能になり、製造時の衛生レベルがさらに向上した、という説明がある。衛生が上がると、鮮度延長が可能になる。鮮度が延びると、製造回数を減らしても品質を維持できる。
ここが重要だ。サプライチェーン改革は「配送を減らしました」だけでは続かない。製造と品質のロジックが揃って初めて、頻度を削っても顧客価値が落ちない。頻度を減らすというより、品質を守るための設計を増やす、という話である。

“頻度の経済”から“精度の経済”へ。

これまでの流通は、回数が武器だった。細かく作って、細かく運ぶ。ピークに合わせ、欠品を避ける。その代償は、工場の段取り替えロス、輸送の空走、荷受けの山、そして廃棄の増加だ。
いま世界は逆風の同時多発に入っている。人手不足は慢性化し、燃料・電力コストは変動し、気候は読みにくい。さらに、食品は「安全・衛生」という最低条件が年々高くなる。こうなると、頻度を上げるほど現場が薄くなり、リスクが増える。
だから次に必要なのは精度だ。発注の読みを上げ、製造の波をならし、輸送の密度を上げる。回数を減らす改革は、“怠け”ではなく“高等技術”になった。北海道での試みは、その象徴だろう。

変わるのは工場だけではない。店舗と物流の「時間設計」を組み替える

製造回数の削減は、工場の都合で完結しない。店舗側のオペレーション、納品の時間帯、発注のタイミング、売場の補充計画までセットで変わる。
今回の取り組みでは「店舗への総配送回数は変更しない」とされている。ここには現実的な落としどころが見える。配送回数まで一気に動かすと、加盟店の負荷が跳ねる。まずは製造の波をならし、品質と供給を守りながら、効率の果実を拾いにいく。改革の順番を間違えない設計だ。
そして、こうした最適化は“地域特性”と相性が良い。北海道でできたことは、別の地域では別の形になる。全国一律ではなく、地域別のサプライチェーンを組む時代へ。コンビニは、インフラであると同時に、地域に合わせて進化する産業になっていく。

「削減の成果」をどう測り、どう広げるか

セブン‐イレブン・ジャパンは、製造効率・輸送効率・フードロス・CO2削減といった効果を期待するとしている。だが勝負は、期待値ではなく実測値にある。
回数を減らしたとき、欠品率はどう動いたか。廃棄は減ったか。工場の残業はどう変わったか。配送員の拘束時間は短くなったか。これらが見える化されれば、取り組みは「北海道の特殊事例」ではなく「全国の設計図」になり得る。
そして、その設計図はコンビニだけの話ではない。弁当、惣菜、デリバリー、給食、医療・介護食——“鮮度と安全”を抱えた産業は同じ課題を共有している。回数を減らしながら価値を保つ技術は、食のインフラを静かに強くする。

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