★ここが重要!

★要点
インバウンド比率6割超の箱根旅館が、動物性食材を使わない「ヴィーガン懐石」を本格展開。代替ではなく“正統な和食体験”として再構築し、多様な背景を持つ旅行者が同じ食卓を囲める環境を整えた。
★背景
訪日客増加とともに、宗教・健康・環境配慮による食の多様化が加速。和食の根幹である鰹出汁に依存しない味づくりは、観光立国とサステナビリティを両立させる宿泊業の試金石となる。

“食べられない人への配慮”から、“誰もが主役になれる食卓”へ。箱根で旅館を展開する株式会社金乃竹が打ち出したのは、動物性食材を使わないヴィーガン懐石だった。舞台は箱根町。インバウンド比率6割超という現実のなかで、和食の構造そのものを問い直す挑戦である。制限ではなく体験へ。観光と環境、文化と多様性をつなぐ、新しい旅館像が立ち上がる。

インバウンド6割の現実――「見えない出汁」が分けてきた食卓

2025年、金乃竹グループの宿泊客の約6割は海外からの旅行者だった。円安や国際線の回復を追い風に、日本の地方観光地は再び熱を帯びている。一方で、宗教的戒律、健康志向、環境配慮などを理由に動物性食材を控える旅行者は世界的に増加している。
問題は、日本料理の根幹にある。鰹出汁という“見えない存在”だ。味噌汁にも煮物にも、静かに溶け込む魚介の旨味。本人だけ別メニュー、あるいは食卓を囲めない疎外感。ヴィーガン対応が特別扱いになりがちな構造が、そこにあった。
だが旅行者が求めているのは、代用品ではなく、他の客と同じようにその土地の文化を味わう体験だ。旅館にとって問われているのは、対応力ではなく、そもそもの設計思想だった。

鰹を使わず、和食を立て直す――発酵と植物の旨味

最大の壁は、鰹出汁を使えないことだ。懐石料理の骨格を支えてきた味の土台である。現場では従来、個別対応が中心だったが、仕込み済みの食材の多くに動物性出汁が含まれていたため、一から作り直す負担も大きかった。
そこで金乃竹が選んだのは、再現ではなく再構築という道だ。100%植物性の和出汁を基礎に据え、昆布、干し椎茸、乾燥野菜、さらには野菜の端材まで活用。味噌や麹といった発酵調味料を徹底的に研究し、単なる“引き算”ではなく、構造を組み替えることで旨味を重ねた出汁の味を再構築した。
動物性に頼らないことで、逆に素材の個性が浮かび上がる。低カロリーで身体への負担も軽い。代替食ではなく、新たな和食体験として成立させた点に、この取り組みの核心がある。

食と環境――フードロス削減という副次的効果

世界では、食料生産が温室効果ガス排出の大きな割合を占めるとされる。観光業もまた例外ではない。大量仕入れ、大量廃棄という旧来型の運営は、持続可能とは言い難い。
金乃竹のヴィーガン懐石は、野菜の皮や端材を出汁に活用するなど、食の多様化への対応がフードロス削減にも踏み込み、結果として環境配慮と接続する。観光業が単なる“豪華さ”ではなく、“持続可能性”という価値で選ばれる、新しい時代が訪れた。

同じ食卓を囲むという文化

懐石とは本来、季節を映し、土地を語る料理だ。そこに分断があってはならない。ヴィーガン懐石の本質は、特定の思想への迎合ではなく、宗教、健康、価値観の違いを越え、同じ空間で同じ文化を共有できる状態をつくることだ。
食卓は、もっとも身近な国際交流の場だ。異なる背景を持つ人々が、同じ器を前に会話を交わす。その経験は、観光を超えた文化理解へとつながるだろう。

金乃竹リゾート公式HP
https://kinnotake-resorts.com/?utm_source=newsrelease02122026

金乃竹グループの取り組み
https://kinnotake-resorts.com/social-impact/?utm_source=newsrelease02122026

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