★ここが重要!

★要点
東京藝術大学発の企画展「Energy」が開催。“力・気配・熱量”をテーマに、11人のアーティストがエネルギーの概念を感覚的に再解釈。鑑賞者自身の価値観を揺さぶる体験型展示。
★背景
脱炭素や資源危機が議論される現代、エネルギーは数字や技術の問題に偏りがち。アートが感情や身体感覚から問い直す動きが、社会の思考転換の契機になりつつある。

エネルギーという言葉は、いまやニュースの常連だ。電力価格、脱炭素、気候危機。だが、その言葉の実感は薄いままかもしれない。上野の藝大アートプラザで開催される企画展「Energy エネルギーってなんだろう?」は、目に見えない力をアートで可視化し、身体と感覚で理解し直す試みだ。技術ではなく感性からエネルギーを捉え直し、“数値の議論”に偏った社会へ切り込む。

エネルギーは“インフラ”から“感覚”へ――社会課題の中心概念を問い直す

世界はエネルギーを巡って揺れている。脱炭素政策、資源価格の変動、再生可能エネルギーへの移行。だが多くの議論は、発電量やCO₂削減率といった数値に集中しがちだ。
今回の企画展は、その文脈をあえて外す。焦点は、目に見えない力、気配、身体感覚としてのエネルギー。鑑賞者は作品を通じて「自分にとってのエネルギーとは何か」という問いを突きつけられる。
社会課題が複雑化するほど、人は抽象的な概念から距離を置く。しかし感覚を起点にした理解は、行動変容を促す可能性を持つ。アートは、理屈より先に“気づき”を与える媒体である。

藝大発、11人の新作が示す“見えない力”の多様なかたち

展示は東京藝術大学に所属または出身のアーティスト11名による新作が中心。視覚表現だけでなく、空間・身体・素材を横断したアプローチが特徴だ。鑑賞者は作品の前で立ち止まり、自身の内面や社会との関係性を投影する。
入場無料・撮影可能という開かれた設計も象徴的だ。アートを特別な空間から日常へ引き戻す試み。鑑賞体験をSNSで共有することで、作品は会場を越えて拡散し、新たな意味を獲得する。

アートと社会の接続――体験型展示が広げる“公共的思考”

近年、文化施設は単なる鑑賞の場から、社会課題を考えるプラットフォームへと役割を変えつつある。没入型アートや体験型展示が広がるのも、その流れの一部だ。
たとえば欧州発の没入型デジタルアートは、鑑賞者自身を作品に巻き込み、新たな理解を生む展示形式として注目されている。
藝大アートプラザも同様に、鑑賞者が主体的に解釈する場を提供する。体験が記憶に残り、議論が生まれる。アートは社会的思考のトリガーになり得るという考え方だ。

2026年1月開催の企画展「藝大アートプラザ・アートアワード受賞者展 2026」

サステナブル時代の文化拠点――無料開放が示す新しい公共性

2018年にスタートした藝大アートプラザは、学生・卒業生・教職員の作品を一般公開するギャラリーとして機能してきた。生活に寄り添うアートの販売やオンラインショップ展開など、文化の裾野を広げる実験を続けている。
重要なのは、誰でも入れる無料空間であること。文化を消費財ではなく公共資源として扱う姿勢だ。
持続可能性の議論が広がるなか、文化活動もまた社会の基盤になりつつある。リユースや循環型ストアの登場が都市文化の価値観を変えたように 、アートもまた新しい社会意識を形成する装置となる。

常設コーナー「LIFE WITH ART」展示風景

“見えない力”をどう生きるか――アートが提示する未来の視点

エネルギーは電力や燃料だけではない。人の情熱、都市の熱気、文化の持続力。社会は多層的なエネルギーで成り立つ。
今回の企画展は、その多義性を可視化することで、鑑賞者に問いを残す。自分の活動の原動力は何か。社会を動かす力はどこから生まれるのか。
気候危機や社会変化が続く時代、答えは一つではない。だが問いを持つこと自体が、未来を考える第一歩になる。アートは、その問いを最も自由な形で提示するメディアだ。

■ 展覧会情報
企画展「Energy エネルギーってなんだろう?」
会場  :藝大アートプラザ(東京都台東区上野公園12-8 東京藝術大学美術学部構内)
会期  :2026年3月28日(土)~5月10日(日)
営業日程:10:00~18:00/月曜休(祝日の場合翌火曜休)
入場料 :無料
公式告知:https://artplaza.geidai.ac.jp/column/30044/

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