★ここが重要!

★要点
秋田キャッスルホテル(秋田県秋田市中通、代表取締役社長 岸本洋喜)が、耕作放棄地を再生した「あきた野ワイナリー」と連携し、県内新興のワイナリーによる限定提供を開始。生産(1次産業)とサービス(3次産業)を直結させ、地域のストーリーを高付加価値な体験として顧客に届けるビジネスモデルを構築。
★背景
地方経済において、拡大する耕作放棄地と観光コンテンツ不足は喫緊の課題。土地固有の風土(テロワール)を活かした産品開発と、それをインバウンドや富裕層へ訴求する「ガストロノミーツーリズム」の視点が、地域再生の有効な手段となっている。

地域に眠る“負の遺産”を、いかにして収益を生むコンテンツへ転換するか。秋田キャッスルホテルと北秋田市初のワイナリー「あきた野ワイナリー」の連携事例は、その一つの解を提示した。寒冷地での欧州系品種の栽培というリスクを取り、耕作放棄地を「テロワール(土地の個性)」という競争優位に変える。さらにホテルの顧客接点を活用し、単なる物販を超えた「体験価値」として提供する試みだ。地域資源のサプライチェーンを組み替え、持続可能な経済圏の構築を検証する実証プロジェクトにあたる。

逆転の生産戦略――「北限のテロワール」を競争優位に

ビジネスにおいて、参入障壁の高い領域こそがブルーオーシャンになり得る。北秋田市の「あきた野ワイナリー」が選んだのは、かつてリンゴ園だった耕作放棄地の再生、そして寒冷地では困難とされた欧州系ワイン専用種の栽培だ。
2018年の開墾からわずか数年で、シャルドネやメルローなどの醸造に成功。北国の厳しい寒暖差を「高品質な酸と香り」を生むための必須条件と捉え直し、他産地との差別化要因へと昇華させた。
放棄された土地を単に復旧するのではなく、より市場価値の高い作物へ転換する。農業の6次産業化を見据えた、戦略性の高いアセットマネジメントといえる。

ホテルのメディア化――“コト消費”に応えるストーリーテリング

プロダクトが良いだけでは、市場には届かない。特に高付加価値商品は、その背景にある物語の伝達が不可欠だ。
秋田キャッスルホテルが展開する「Hello Akita Project(ハローあきたプロジェクト)」は、ホテルを単なる宿泊拠点ではなく、地域産品のショールーム兼メディアとして機能させる戦略だ。同ホテル内の「バー・ロータス」では、バーテンダーが語り部となり、ワインの味と共に「再生の物語」を提供する。
インバウンドや感度の高い顧客層が求めているのは、画一的なサービスではなく、その土地でしか味わえない真正性だ。ホテルという空間が、地域の埋もれた価値を翻訳し、世界基準の体験へと変換する装置となる。

地域エコシステムの構築――CSV経営としての拡張性

本プロジェクトの本質は、単発のコラボレーションにとどまらない点にある。同ホテルは、就労継続支援施設と連携したコーヒー開発や、地元大学の研究成果である食材の採用など、多角的な連携を進めている。
地域内の多様なステークホルダーを巻き込み、ホテルがハブとなって経済循環を生み出す。これは企業の社会的価値と経済的価値を両立させるCSV(Creating Shared Value)経営の実践に他ならない。
耕作放棄地の解消、特産品の創出、観光客の満足度向上。これらを一直線に繋ぐビジネスモデルは、他の地方都市にとっても有効な雛形となるはずだ。地域の課題解決をコストではなく、新たな商機と捉える視点が、次の地方創生を牽引する。

【施設・店舗情報】
秋田キャッスルホテル 8F バー・ロータス
提供開始:2025年12月3日(水)~
営業時間:17:00~24:00
対象商品:あきた野ワイナリー「シャルドネ」
住所:秋田県秋田市中通1-3-5
ウェブサイト:https://www.castle-hotel.jp/

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