Daigasグループ新研究開発拠点「Daigas Innovation Center」
★ここが重要!

★要点
大阪ガスが、植物由来のバイオエタノールを原料に、都市ガスの主成分である合成メタン(e-メタン)を製造する新技術「エタノールメタネーション」の開発に、世界で初めてラボスケールで成功。従来の製造法に比べ、グリーン水素の使用量を4分の1に大幅削減できる画期的な手法だ。
★背景
カーボンニュートラル実現に向け、都市ガスの脱炭素化はエネルギー業界の至上命題。しかし、既存インフラを活用できるe-メタンの製造には、再エネ由来のグリーン水素が大量に必要で、その製造コストと電力供給の不安定さが大きな壁だった。水素への依存度を下げ、より現実的なコストでe-メタンを製造する技術が求められている。

都市ガスの未来は、水素だけで描くにはあまりに複雑だ。大阪ガスが発表した新技術「エタノールメタネーション」は、その現実に対する、一つの賢明な答えかもしれない。主役は、トウモロコシなどから作られるバイオエタノール。これを原料に加えることで、e-メタン製造に不可欠だったグリーン水素の使用量を、一気に4分の1まで削減する。脱炭素への道筋を、より現実的なものへと引き寄せる、独創的な一手だ。

水素の壁——e-メタン普及を阻むジレンマ

e-メタンは、既存のガス管やガス機器をそのまま使えるため、都市ガスのカーボンニュートラル化に向けた切り札とされる。しかし、その製造は簡単ではない。一般的な「サバティエメタネーション」という手法では、CO2と大量の水素を反応させる必要があり、その水素を再生可能エネルギー由来の電力(グリーン電力)で製造するには、莫大なコストと広大な発電設備が必要となる。再エネの出力変動も、安定生産を難しくする。 つまり、「ガスを脱炭素化するために、大量のグリーン電力が必要になる」というジレンマ。これが、e-メタン普及を阻む大きな壁だった。

大阪ガスの“合わせ技”——バイオエタノールが水素を代替する

大阪ガスが開発した「エタノールメタネーション」は、この壁を乗り越えるための“合わせ技”だ。原料に、CO2だけでなく、植物由来でカーボンニュートラルな「バイオエタノール」を加える。これにより、サバティエメタネーションに対して水素の使用量を4分の1にまで削減。水素製造に必要な再エネ電力も4分の1になり、製造コストの大幅な低減が期待できる。CO2の調達も不要になる。 技術的な鍵は、大阪ガスが独自に開発した触媒。この触媒を用いることで、バイオエタノールを安定的にメタンへと変換することに、世界で初めて成功した。ラボでの2,000時間にわたる耐久試験でも、その性能を維持し続けたという。

バイオエタノールからのe-メタン製造の概略プロセス
エタノールメタネーションの反応プロセス

多様な選択肢を持つ強み

大阪ガスは、この新技術だけを追求しているわけではない。従来型のサバティエメタネーションや、微生物の力を利用する「バイオメタネーション」、さらには次世代技術として期待される「SOECメタネーション」など、複数のe-メタン製造技術を同時並行で開発している。 エネルギーを取り巻く環境の不確実性が高まる中、一つの技術に固執するのではなく、多様な選択肢(マルチパスウェイ)を持つこと。それ自体が、企業のレジリエンス(強靭性)を高める。今回の「エタノールメタネーション」は、その選択肢をさらに豊かにする、有望な一枚のカード。今後は、エンジニアリング会社などと連携し、実用化に向けたスケールアップを目指していく。

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