東北大学は、フランス国立応用科学院リヨン校などとの共同研究により、天然ゴムを利用して200℃未満の工場廃熱などから高い動力エネルギーを得ることに成功した。この新技術は、これまで有効活用が難しかった低温廃熱を電気エネルギーに変換する「環境発電」への応用が期待されており、研究成果は2025年7月7日に科学誌「Joule」でオンライン公開された。

熱-動力エネルギー変換機構の全体写真。中央の可動台の上下に天然ゴムチューブ群で構成される弾性体が配置され、両方向からの力を受ける構造となっている。この可動台は、力を測定する際にはアクチュエータに固定することが可能。

安価な天然ゴムが鍵、形状記憶合金に匹敵する性能で環境発電を加速。

現在、産業活動で使われるエネルギーの多くは、最終的に熱として大気中に放出されている。特に200℃未満の低温廃熱は、その大部分が有効活用されず廃棄されており、この未利用エネルギーの再利用が長年の課題で、既存の熱から電気への変換技術は効率が低いという問題があった。そして今回、東北大学流体科学研究所の小宮敦樹教授らの研究グループは、この課題を解決する新たな道筋を示した。
研究グループが着目したのは、天然ゴムが持つ「弾性熱量効果」という性質だ。これは、ゴムを急激に伸縮させると温度が変化する現象のことで、研究グループはこの原理を逆に利用し、わずかな温度差でゴムを伸縮させて動力を生み出す、新しい熱ー動力変換機構を開発した。実験では、わずか25℃の温度差で、高価な形状記憶合金に匹敵する120mW相当の出力を確認。安価で入手しやすい天然ゴムで高い性能を実現した点が、この技術の大きな特長だ。
小宮敦樹教授らが開発したこの技術を大型化すれば、工場廃熱などから直接動力や電気エネルギーを生み出すことが可能になる。得られた動力は、既存の発電機(オルタネーター)を動かすのにも十分な力と動きを持っており、熱から電気への変換が現実的であることを示唆している。将来的には、熱が発生したその場で電気に変える「地産地消」のエネルギーシステムを構築し、持続可能な社会の実現に貢献することが期待される。

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