★ここが重要!

★要点
2026年9月3日、埼玉県越谷市で木造賃貸住宅「MOKURIE(モクリエ)レイクタウン」の記者向け内覧会が開かれた。大和ハウス工業が5月に全国展開を始めた木造賃貸住宅の、初の実棟である。外装のオリジナルルーバーと1階キッチンの面材などに、埼玉県秩父産スギの間伐材を使用。施工は地元工務店が担った。使用量は約1.5立方メートル。それ自体は決して大きな数字ではない。注目すべきは、そのルーバーを10〜15年周期で「交換する前提」で設計している点だ。劣化した部材を取り替えるメンテナンス行為が、そのまま次の間伐材の需要になる。維持管理を、森林資源の循環に接続する設計思想である。事業形態は分譲のみ。販売価格は土地建物で7億円台、想定利回りは4.5%前後。同社は「成約を急がない」と明言した。取り組みに共感する入居者とオーナーを、時間をかけて探す構えだ。
★背景
日本の国土のおよそ7割は森林である。しかし戦後に植えられたスギ・ヒノキの人工林は、間伐して使い続けなければ健全な状態を保てない。間伐材に安定した出口がなければ、山は荒れ、林業は成り立たない。一方、建築分野の脱炭素は待ったなしだ。木材は炭素を固定する。国も2050年カーボンニュートラルに向けて建築物の木造・木質化を後押ししている。大和ハウス工業は2024年4月に「Future with Wood準備室」を立ち上げ、2025年4月に「Future with Wood推進部」へ昇格させた。ただし住宅、とりわけ賃貸住宅は、この流れから取り残されてきた領域である。コスト圧力が強く、借り手にとって住まいは「借りもの」であり、どこの木で建てられたのかを意識する機会はほとんどない。食の世界では「顔の見える関係」が定着した。住まいでは、なぜそれが起きなかったのか。「MOKURIE」は、その問いから出発した商品である。

越谷レイクタウン駅から歩いて10分。イオンレイクタウンの巨大な商業施設群を背にして住宅街へ入ると、木の格子に包まれた2階建てが現れる。第一種低層住居専用地域。敷地面積約874平方メートル、延床面積約760平方メートル、全10戸。外装を覆う横格子のルーバーは、埼玉県秩父の山から出た杉の間伐材だ。2026年9月3日、大和ハウス工業「MOKURIEレイクタウン」の記者向け内覧会。竣工は8月31日、入居開始は9月26日。同社にとって初の木造賃貸住宅商品の、初の実棟である。会場となった1階のコンセプトルームは、報道陣で埋まった。天井は高いところで3メートル。テーブルトップの下にも、外装ルーバーと同じ秩父産の杉材が使われている。上席執行役員・集合住宅事業本部長の竹林桂太朗さんは、住宅の話ではなく、スーパーの野菜売り場の話から始めた。

顔の見える野菜はある。顔の見える住まいは、あるか

生産者の写真が貼られた野菜を、買ったことがあるだろうか。竹林さんはそう切り出した。誰が、どこで、どんな思いでつくったのか。食の世界では、その情報に価値を認める消費者が確実に増えてきた。では、住まいはどうか。地元の工務店に依頼すれば、確かにそこには顔の見える関係がある。だが、それはごく限られた範囲の経済活動にとどまる。自分の家がどこの木で建っているのかを知る人は、ほとんどいない。ましてや賃貸住宅は、住み手にとって「借りもの」だ。素性を持たない商品として流通してきた。その状態に疑問を感じた、と竹林さんは語る。産地や作り手という概念を、住宅の産業に持ち込めないか。それが「MOKURIE」の出発点になった。会場のテーブルには、ルーバーと同じ寸法の杉材でつくられた小さなカード立てが置かれていた。QRコードが付いている。読み込むと、森林組合の担当者が「どんな思いで山を育てているか」を語る映像が再生される。森林組合があり、林業事業者がいて、製材所があり、プレカット工場があり、施工する工務店があり、管理する大和リビングがいる。パンフレットには、その連なりが図で示されている。自分が住む建物の木が、どの山から来たのか。それを意識させること。設計仕様よりも先に、同社が置いたのはこの一点だった。

山の源流とつながり、持続・循環可能な住まいづくりを続けたい、と語ってくれた、大和ハウス工業株式会社の竹林桂太朗さん(上席執行役員 ハウジング・ソリューション本部 集合住宅事業本部長)。

秩父のスギ「1.5立米」。数字は小さく、思想は大きい

では、実際にどれだけの木が使われているのか。説明によれば、秩父産材が使われているのは外装ルーバー、一部の居室の1階キッチンのリビング側の面材、そして主寝室の照明カバーの一部。合計で約1.5立方メートル。構造材は関東を中心に調達し、柱はすべて国産材、梁には一部で米松を使用している。だが「秩父産」に限れば、量は限定的だ。記者団からも、その点は率直に問われた。1.5立米では山の経済に与えるインパクトは大きくないのではないか、と。同社側の答えも率直だった。他の案件でも設計段階で概ね1立米程度を見込んでおり、単体でのインパクトは大きくない、と認めた上で、コストが折り合えば構造材にも県産材を広げたいと述べた。県産材利用に対する補助金の活用も視野に入る。「できればオール県産材でいきたい」。ただし現時点では難しい、とも。 内装についても同様だ。壁や天井をシート材ではなく本物の木にしたい。香りも音の響きも違う。しかし賃貸住宅では傷やクレームの問題が立ちはだかる。だからこそ、まずここから始める。使えるものは試し、住み手の反応を見て、使える範囲を広げていく。「これで完成しました、だから広げます」ではない。ここから木のように育てていく——同社はそう説明した。北海道と沖縄を除き、全国共通のプランと構造。変えられるのは、使う木材の産地と、施工する工務店。奈良なら吉野スギ、岐阜なら飛騨のヒノキ。埼玉県には森林組合が3つあり、今回はタイミングの合った秩父になった。次に熊谷やさいたま市エリアで建てるなら、その時の森林組合と相談し、ちょうどいい間伐材を使う。土地を取得して計画をする段階から、森林組合との調整が始まる。そういう仕組みだ。

1階のダイニングキッチンスペース
2階のベッドルーム
ベッドルームの間接照明にも外装ルーバーと同じスギ材が使用されている。

「交換」を、劣化ではなく需要と読み替える

この物件で最も注目すべきは、素材でも意匠でもない。時間の設計である。アパートローンは40年が当たり前になった。つまり建物は40年使われる。その40年のあいだに、外装ルーバーは何度か交換される。10〜15年に一度、あえて取り替える。なぜ、わざわざ交換するのか。山は、間伐材を切り出し続けなければ維持できないからだ。長持ちする商品をつくり、それが一番の価値だと売ってきた——竹林さんはそう振り返る。確かにそれ自体は良いことだ。しかし、自然を維持していくためには、10年から15年のスパンで外装ルーバーを取り替えるレギュレーションを、オーナーに提案していきたいのだという。新しい間伐材がルーバーになり、森林組合の収入になり、地元の山が守られる。ここで起きているのは、発想の反転である。通常、メンテナンスはコストだ。劣化した部材を取り替える、避けられない支出として計上される。だが「MOKURIE」では、その交換周期がそのまま森林資源への需要になる。維持管理の行為が、山にお金を戻す仕組みとして設計されている。建てて終わりではない。建ててからが、循環の始まりになる。「うちのルーバーは、あそこの山の木を使ってるんだよ」。家族が子どもにそう話す場面を想像している、と竹林さんは語った。入居者を林業の現場見学会や植樹体験へ案内する計画も、5月のリリース段階から明記されている。開発に携わった技術主幹の谷川靖洋さんは、自分が住んでいる家がどこの森とつながっているのか、なぜ木を使うことが森を守ることになるのか、それを体感できる住まいを目指すと述べた。特に子どもにとっての体感は、次世代につながる。「MOKURIE」に家族向けの間取りが多いのは、そのためでもある。

外観とモミの木。中庭に面したルーバーは、10〜15年周期での交換を前提に設計されている。
MOKURIEプレート
MOKURIE(モクリエ)は、高い環境性能を備えており、省エネ性能を客観的に証明するBELS(建築物省エネルギー性能表示制度)認証において、最高評価などの高い基準を取得している。

使い終わったルーバーは、どこへ行くのか

ここで一つ、避けて通れない問いがある。交換したルーバーは、どこへ行くのか。無垢材である以上、紫外線による劣化は避けられない。同じ建築資材として再利用するのは難しい、というのが現時点の見立てだ。検討されているのは、チップ化して外構植栽の足元に敷き込むなど、敷地内での再活用。地域によっては木質バイオマス燃料としての引き取りも選択肢になり得るという。とはいえ、同社にとっては「建材は建材として」使う方が自然だ、との言葉もあった。関連して、興味深い事例が紹介された。名古屋で瓦メーカーと組み、能登半島地震で崩れた能登瓦——仮置き場に何十トンも積まれたままの瓦をタイルに混ぜ込み、賃貸住宅で使用した実例が、先月できたという。「このチップは秩父の木で、ルーバーとして使われていたけれど、最終的にここに来ました」。そう説明できるようにしたい。建築廃材や捨てられるものをどう生かすか。そこには常にコストの壁がある。そして今の世の中では、意思のある誰かがその負担を引き受けている。大手メーカーは供給量も使用量も大きい。そのボリュームを生かして生産性を上げ、サーキュラーエコノミーの側に組み込むことができるのではないか。自社が標準的に使うことで、他社も安く使えるようになる。それが理想だ——竹林さんはそう述べた。後始末まで考えた設計、建築へ。その起点になり得るか、という記者の問いに、竹林さんは「そうです」と答えた。

バルコニーのない賃貸——DOMA、ENGAWA、そして犬

建物そのものの提案も、一般的な賃貸アパートとはかなり違う。まず、バルコニーがない。通常バルコニーが配置される空間を、1階は「DOMA(土間)」、2階は「ENGAWA(縁側)」として使う。DOMAには素足に適した石調の仕上げ材、ENGAWAにはフローリングや畳調の仕上げ材が採用されている。1階LDKの天井高は2.7メートル。床面を周囲より下げるダウンフロアを組み合わせ、最大3メートルの開放感をつくる。2階の南側居室は勾配屋根を生かし、天井高は最大4.7メートル。その下部を天井高1.4メートルに抑え、ロフトとして使う提案も見せた。実質的に3層の空間である。全10戸のうち3LDKが8戸、2LDKが2戸。専有面積は74〜86平方メートル、中心は80平方メートル前後。断熱等級は5、樹脂サッシを採用し、ZEH-Mに対応する。各戸にプライベートガーデンを設け、敷地中央のもみの木がある広場には、リードを外して過ごせる木調タイル床のスペースを配置。住戸内には愛犬用の足洗い場もある。ペット共生は、この物件の主要テーマの一つだ。ボルダリングウォールのある住戸、本棚を組み込んだ住戸。実証実験的な仕掛けが各所に盛り込まれている。賃料は23万円から24万2000円(予定)、共益費7000円。ボルダリングの住戸が23万7000円(予定)、ライブラリーの住戸が23万8000円(予定)。この規模のメゾネットは周辺に類例が乏しく相場比較が難しいが、大和リビングの管理物件では近隣の戸建て賃貸が22万円で成約した実績があるという。7月から募集を開始し、複数の内見問い合わせが入っている。満室の目標は2027年3月。

玄関内に用意された犬小屋。「ペット共生」もMOKURIEの大切なテーマの一つ。
ボルダリングウォール仕様になっている子ども部屋。1階のLDKの天井高は2.7m(一部除く)~最大3mのダウンフロア。
こちらは、大人向けの書斎スペース。
階段部も書棚仕様に。
階段を上ると畳敷きのスペースに。なんとも贅沢な造りだ。
1Fのダイニングキッチンスペースから外庭へ、木のステップが用意されている。
しかも木のステップは、蓋を開けると道具入れに。なんとも心憎い設計だ。
窓に設置されている開閉センサー、セキュリティ対策も万全だ。

「急がない」という商品戦略

事業形態は分譲のみ。請負は考えていない。理由は明快だった。賃貸住宅部門は引き合いが多く棟数も伸びている一方、工事担当者の確保が追いついていない。木造分野に人員を割くのは現実的に厳しい、というのが同社の説明である。販売価格は、土地と建物でおよそ7億円台。同社の主力である賃貸住宅商品「TORISIA」と比べれば、単価は高い。想定利回りは4.5%前後。このエリアの表面利回り相場感である。 売却はこれから。ただし、急がない。まず仕組みをきちんとつくる。入居者には秩父の山へ足を運んでもらうような取り組みに協力してもらいたい。住んでみてどうだったか、どこがつながっているのか、良い点も悪い点も声を拾い、SNSやサイトで発信していく。借りたいと言われたから貸す、ではない。この取り組みに共感してくれる人に入ってもらう。だからリーシング期間は長くなる可能性がある。そのうえで、趣旨に賛同するオーナーに購入してもらいたい。供給目標は3年間で100棟規模。「ちょっとスローな感じではありますけれども」と竹林さんは付け加えた。新潟県で1棟が建設中。東京都、石川県、茨城県、福島県などでも計画が進む。数値も公表していく方針だという。木材の使用率が何パーセントに達し、それが山のどれくらいの面積に相当するのか。オーナーにも入居者にも分かりやすい指標をつくり、データを取り続ける。自然資本を扱う事業にとって、測れることは信頼の前提である。ネイチャーポジティブや自然関連財務情報開示の議論が企業経営に入り込みつつある今、この姿勢は「MOKURIE」を単なる商品から、検証可能な実証事業へ引き上げる。

大工がいない国で、木造をどう増やすのか

質疑応答の終盤、話題は業界全体の構造問題に及んだ。高断熱化は国策であり、低層住宅でも避けて通れない。だが本州の現場では、そもそも大工が足りない。つくれる場所が限られてしまうのではないか。 竹林さんは、社内でも非常に議論していると前置きし、二つの方向を示した。一つは、職人を育てる道。職人の学校を設ける企業もあれば、正社員として大工を育てる企業もある。ただし、それには覚悟が要る。技術を教えるだけでは足りない。学び終えた人がその後もずっと建設業界で働けるだけの仕事量を、自分たちが用意し続けなければならない。人口が減っていく国で、エリアごとにその責任を負えるのか。 もう一つは、手間を減らす道。10人でやっていた仕事を5人でできるようにする。工場生産の部材を使い、短工期で均質な品質をつくる。プレファブリケーションという、同社の創業理念そのものだ。ところが現実には逆方向に進んでいる、と竹林さんは指摘する。新しい商品が次々に生まれ、法規制が加わるたびに、部品点数は増えていく。シンプルにするはずのプレファブリケーションが、複雑化している。鉄骨造では、それなりにやってきた。だから「TORISIA」は信頼される商品になり、価格も在来工法よりこなれている。では木造はどうか。これまで十分に取り組んでこなかった分、余地は大きい。「木造のプレファブリケーション化は、僕らの頭の中にはあります」。まだ方針として決定した話ではない、と断りながら、竹林さんはそう明かした。そのためには原材料、つまり森林とつながる必要がある。外壁を窯業系建材から木に置き換えるなら、同等の耐用年数をどう確保するのか。反りの問題をどうクリアするのか。課題は山ほどある。だが方向は、山の源流を向いている。

新築からストックへ。同じ週に出た、もう一つの発表

内覧会の翌日、9月4日。大和ハウス工業は国内住宅事業の再編を発表した。新築戸建住宅事業は展開エリアを14支社・支店、23エリアに絞り込む。一方、アフターサービスを含む住宅ストック事業は、グループ会社を再編して全国47都道府県に展開する。2027年4月1日付で「大和ハウスパートナーズ株式会社」「D-ROOMパートナーズ株式会社」が発足し、メンテナンスからリフォーム、買取販売、不動産仲介、賃貸管理までを一本の窓口に集約する。背景にあるのは、新設住宅着工戸数の長期的な減少である。同社の説明によれば、住宅需要の地域差は拡大し、都市圏では市場の存在感が高まる一方、縮小の進む地域もある。そしてリフォームや賃貸管理といった既存住宅を活用する市場は、拡大を続けている。つまり、住宅産業の重心が「建てる」から「持ち続ける」へ移りつつある。「MOKURIE」のルーバー交換設計は、この転換と正確に響き合う。建てて売って終わりなら、10〜15年後の交換は誰の関心事でもない。だが40年使う建物を管理し続ける事業構造の中でなら、交換周期は「予定された仕事」であり、「予定された木材需要」になる。維持管理を担う体制と、森林資源の循環設計。この二つが同じ企業の中で同時に組み上がったことに、偶然以上の意味を読み取ることもできるだろう。

森の出口を、都市につくる

日本の森林は国土の約7割を占める。身近にあるようで、実際には遠い。間伐材に安定した出口がなければ、山は手入れされない。手入れされない山は、水を蓄える力も、土砂災害を防ぐ力も、炭素を吸収する力も落ちていく。森林の問題は、林業だけの問題ではない。その出口を、都市の賃貸住宅につくれるか。今回使われた秩父のスギは1.5立方メートル。正直に言えば、山の経済を動かす量ではない。同社自身がそれを認めている。だが、この物件が提示しているのは量ではなく、仕組みの型である。地域の間伐材を使う。地元の工務店が建てる。住み手が産地を知る。10〜15年後に取り替え、また地域の木を使う。取り替えた木は、チップになって敷地に戻る。このサイクルが100棟、1000棟と積み上がったとき、はじめて数字は意味を持つ。そして同社は、その数字を公表すると言った。理念だけでは山は守れない。同時に、量だけを追っても関係は生まれない。越谷レイクタウンに建った10戸の賃貸住宅は、その両方をつなぐ最初の実験である。「木のように育てたい」と竹林さんは語った。ここから何本の枝が伸びるのか。Maintainable®︎NEWSでは、入居後の暮らしと、最初のルーバー交換が訪れる10年後を見据えて、この取り組みに注目したい。

2026年8月31日に竣工した「MOKURIEレイクタウン」。外装の縦格子ルーバーに埼玉県秩父産スギの間伐材を使用している。場所は、JR武蔵野線越谷レイクタウン駅から徒歩10分。敷地面積約874㎡、木造(在来工法)2階建て延べ床面積約760㎡全10戸で、ZEH-M、断熱等級は「5」レベルだ。

参考:

MOKURIE(モクリエ)
https://www.daiwahouse.co.jp/tochikatsu/d-room/products/mokurie/index.html

大和ハウス工業「MOKURIE」全国展開開始ニュースリリース
https://www.daiwahouse.co.jp/about/release/house/20260507091711.html

Future with Wood(建築物の木造・木質化)
https://www.daiwahouse.co.jp/business/fww/index.html

FAQ

Q. 「MOKURIE(モクリエ)」とは何ですか?
A. 大和ハウス工業が2026年5月11日から全国展開を開始した木造賃貸住宅商品である。木造軸組工法の2階建て重層長屋タイプで、事業形態は分譲のみ。地域で育った木材を外装ルーバーなどに活用し、地域の工務店が施工することで、森林保全と地域経済、住まい手の暮らしをつなぐことをコンセプトとしている。

Q. 「MOKURIEレイクタウン」はどのような物件ですか?
A. 埼玉県越谷市レイクタウン5丁目に2026年8月31日に竣工した、「MOKURIE」の初の実棟である。敷地面積約874平方メートル、延床面積約760平方メートル、全10戸。3LDKが8戸、2LDKが2戸で、専有面積は74〜86平方メートル。入居開始は2026年9月26日。

Q. 秩父産の木材は、どこに使われているのですか?
A. 外装のオリジナルルーバー、1階キッチンのリビング側面材、主寝室の照明カバーの一部などに、埼玉県秩父産スギの間伐材が使われている。使用量は約1.5立方メートル。構造材は関東を中心に調達し、柱はすべて国産材が使用されている。

Q. なぜ、あえてルーバーを交換するのですか?
A. 森林は間伐を続けなければ健全な状態を保てない。間伐材に継続的な需要がなければ、山の手入れは進まない。「MOKURIE」は外装ルーバーを10〜15年周期で交換する運用をオーナーに提案することで、交換のたびに新しい地域材の需要を生み出す設計としている。

Q. 交換したルーバーは、どうなるのですか?
A. 無垢材のため紫外線による劣化が進み、同じ建築資材として再利用することは難しいと見られている。現時点では、チップ化して外構植栽の足元に敷くなど、敷地内での再活用が検討されている。地域によっては木質バイオマス燃料としての活用も選択肢になり得る。

Q. なぜ地域の工務店が施工するのですか?
A. 地産材の活用に加えて施工も地域に委ねることで、林業、木材加工業、建設業における雇用創出と経済循環を生み出すためである。工法は一般的な在来軸組工法で、特別な技能は必要ない。ただし同社が要求水準を定め、品質確認を行う体制をとっている。

Q. 全国どこでも同じ建物になるのですか?
A. プランと構造は全国共通のレギュレーションで固定されている。品質を確保するためである。変わるのは、使用する地域材の産地と施工する地元工務店。エリアの特性に応じたコンセプト住戸は、本社と営業所が協議したうえで設定される。北海道と沖縄は外観・仕様が異なる。

Q. 入居者は森とどう関わるのですか?
A. 住まい手を対象とした林業の現場見学会や植樹体験を実施する予定である。また、外装ルーバーと同じ杉材でつくられたカード立てのQRコードから、森林組合の担当者が山づくりへの思いを語る映像を見ることができる。

Q. 事業として成立するのですか?
A. レイクタウンの販売予定価格は土地建物で7億円台、想定利回りは4.5%前後。賃料は23万円から24万2000円(別途共益費7000円)。同社は成約を急がず、取り組みに共感する入居者とオーナーを時間をかけて探す方針を示している。供給目標は3年間で100棟規模。

Q. この取り組みは、住宅産業全体にとってどのような意味を持ちますか?
A. 新設住宅着工戸数が長期的に減少するなか、住宅産業の重心は「建てる」から「持ち続ける」へ移りつつある。

あわせて読みたい記事

Future with Wood STORY 木と建築と地域と、人々の未来へ

【木築情報モクショナリー】木造建築の未来を切り拓く。大和ハウス工業、商業・事業施設にBIM対応を本格導入。

【木造建築は“循環する都市装置”になるか】サーキュラー木造温室が国際デザイン賞を受賞

【木築情報モクショナリー】富山県黒部市に誕生、地域森林を使った中高層耐火木造共同住宅「パッシブタウン第5街区」。

【木築情報モクショナリー】世界初、高さ110メートルの「純木造超高層ビル」建設技術が確立。