九州大学と福岡市に本社を置く農業関連企業welzoが、持続可能な農業を目指し、CO2排出ゼロの窒素肥料開発に向けた共同研究を開始した。空気中の窒素を利用する独自技術「プラズマアグリ」を活用し、将来の肥料不足への対策を視野に入れたこの研究は、持続可能な農業の次の一手となるか?

肥料不足への懸念と国内自給率の向上

九州大学とwelzoは、空気中の窒素を活用する新しい肥料製造技術「プラズマアグリ」を共同で研究している。この技術は、化石燃料に依存しない窒素肥料の製造を可能にするもので、CO2排出量を大幅に削減できるとされている。
世界的な人口増加とともに肥料原料の供給不足が予測される現在、日本では農業に不可欠な窒素肥料の約97.5%が輸入依存だ。この依存度の高さが、将来的に深刻な供給問題を引き起こす可能性が懸念されている。さらに、現在広く利用されている窒素肥料の製造方法であるハーバー・ボッシュ法は、大量のエネルギーを消費し、CO2を多く排出するという環境面での課題も抱えている。
こうした背景の中、九州大学とwelzoの共同研究は、持続可能な肥料製造技術を開発し、国内自給率の向上を図ることを目指している。特に、空気中の窒素を直接利用する「プラズマアグリ」技術は、農業における窒素の国内供給を大幅に増加させ、食料自給率の向上にも寄与すると期待されている。
「プラズマアグリ」は、九州大学が世界的にリードする技術であり、空気中でプラズマを発生させ、窒素肥料を生成する。この技術により、化石燃料を使用せずに肥料を製造できるため、環境負荷を軽減する革新的な技術として注目されている。
この技術を実用化するため、九州大学とwelzoは、1年以内にPoC(概念実証)としての実用化を目指している。これにより、農業分野における窒素の国内供給率が劇的に向上する可能性があり、長期的には日本の農業の自給率向上に大きく寄与することが期待されている。
welzoが運営する福岡市西区の研究農場では、プラズマアグリ技術を使った窒素肥料開発だけでなく、キュウリの自動栽培システムなど、スマート農業の実現に向けた研究も行われている。これにより、少子高齢化による農業従事者の減少や、食糧供給の安定化など、日本が直面する農業の課題解決にも寄与することが期待されている。
この研究農場で収穫された作物は、地域社会に還元され、地元の子どもたちへの収穫体験など、地域貢献活動も積極的に行われている。

九州大学 COI-NEXT RCPAS 事務局

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