
★要点
2026年3月、1936年竣工の「弥栄会館」の一部を保存・活用した帝国ホテル 京都が開業した。老朽化と耐震性の問題で劇場を含む大部分が使われなくなっていた建物を、外壁2面と躯体を残し、タイルとテラコッタを再利用してホテルへ転換。7月9日には「旧弥栄会館」として国登録有形文化財の登録継続が決まった。同じ2026年、6月25日には重要文化財の旧奈良監獄を活用した「星のや奈良監獄」が開業。4月21日には村野藤吾設計の旧横浜市庁舎を使った「OMO7横浜」がオープンした。さらに旧京都新聞本社ビルでは、改修棟と新築棟を組み合わせた約240室のホテル計画が動き出している。共通するのは、古い建物を凍結保存するのではなく、用途を変えて収益を生み、その収益で建物を維持し続けるという考え方だ。
★背景
日本にはこれから、耐震性の不足、設備の老朽化、空室化、用途そのものの消滅によって、本来の役割を終える建物が大量に出てくる。高度成長期に建てられた庁舎、学校、オフィス、団地。寺社や町家だけが歴史的建築ではない。そして選択肢は長らく二つしかなかった。文化財として凍結保存するか、解体して新築するか。だが第三の道がある。診断し、残す価値を決め、補強し、用途を変え、使い、収益を生み、維持する。アダプティブ・リユース(適応的再利用)と呼ばれるこの手法は、建築保存を「過去を守る活動」から「未来へ使い続ける経営」へ変える可能性を持つ。加えて、建築分野は日本のCO2排出量の約4割を占め、国は2028年度を目途に、建築物の計画から解体までのライフサイクル全体でCO2を算定・評価する制度の開始を目指している。建てないことの環境価値も、測られる時代に入る。
祇園の町を歩くと、天守閣のような屋根が見える。
弥栄会館。1936年竣工。設計は大林組の木村得三郎。鉄骨鉄筋コンクリート造、地上5階地下1階の劇場建築で、各階に銅板瓦葺きの屋根をかけ、正面中央部の付庇や宝形造の屋根が城郭の天守を思わせる、和風意匠を巧みに織り込んだ造形だった。
当初は演劇や人形浄瑠璃に使われ、やがて映画館やダンスホール、コンサートの会場となり、地域の人々に親しまれてきた。
だが90年近い時間は、建物を消耗させる。
老朽化と耐震性の問題により、本来の用途である劇場を含む大部分が使用されなくなっていた。
こうなったとき、多くの建物は姿を消す。
文化的な価値のある歴史的建造物が、老朽化や耐震性の問題で何らかの改善が必要になった時に、やむなく解体されるケースも多い。
弥栄会館は、別の道を選んだ。
劇場をやめて、ホテルになった。
そして2026年7月、その建物は「旧弥栄会館」という新しい名で、国登録有形文化財の登録を継続された。
用途は変わった。姿も一部変わった。
それでも文化財であり続けている。
建物にも、二度目の人生がある。
劇場がホテルになっても、「弥栄会館」であり続けられるか
まず、この登録継続がなぜニュースなのかを整理しておきたい。
登録有形文化財の建造物は、建築面積の変更や、外観を変更する範囲が通常望見できる4分の1を超える場合、現状変更の届出が必要になる。
つまり、大きく手を入れれば文化財としての扱いが問われる。
保存の範囲を狭めれば、登録が続かない可能性もある。
「帝国ホテル 京都」の本棟は、保存範囲が縮小したものの、外壁2面および躯体の保存、外壁タイル・テラコッタの保存と再利用、銅板屋根や飾り金物の更新などを実施した。これらにより、建築物の最も重要な要素である立面構成について価値が十分に保持され、「新たな生命を与えられた」として登録が継続された。帝国ホテルは、このことは全国的にも注目されるケースだとしている。
ここに、大きな問いが含まれている。
建物の価値とは、すべての材料をそのまま保存することなのか。
もし答えがイエスなら、耐震補強も設備更新もできない。
使えない建物は、いずれ朽ちる。朽ちれば、価値ごと消える。
今回の判断は、「立面構成」という、その建物をその建物たらしめている要素に価値の核心を置いた。
すべてを残せなくても、何を残すかを見極めれば、価値は継承できる。
これは保存の後退ではなく、保存の実務化だろう。
そして帝国ホテル 京都は2026年3月5日に開業した。設計施工は大林組。90年前に設計した会社が、90年後の改修も手がけたことになる。

photo Masatomo Moriyama
「生け捕り」された16,387枚のタイル
この工事で、もっとも印象的な言葉が「生け捕り」である。
地元の人達や観光客の目につきやすい南西側の外壁のタイルは、剥落防止措置を行ってそのまま残した部分と、”生け捕り”して再利用し貼り直した部分から構成される。生け捕りとは、再利用を前提に、既存の材料に損傷を与えないように取り外すこと。この工事では、外観を構成していたオリジナルのタイル16,387枚(解体前建物全体の10.6%)を生け捕ることができた。
1万6千枚。
一枚ずつ、割らないように外し、番号を振り、また貼る。
新品を焼けば、はるかに速い。
それでも古いタイルを残すのは、90年分の焼きムラや色の揺らぎが、新品では再現できないからだ。
やっていることは、リサイクルではない。リユースである。
砕いて原料に戻すのではなく、そのままの形でもう一度使う。循環経済の階段でいえば、最も高いところに位置する。
保存の内訳も、丁寧に切り分けられている。
外壁は、景観継承の観点から南西面を残す必要があり、施工中の安全性も考慮して、構造体の解体と補強が並行して行われた。外観のもうひとつの特徴である壁面のテラコッタのレリーフは、劣化の状態に応じて修復し、アンカーピンで固定。文様は、自然や和を感じさせる唐草文様の一種「宝相華」である。
一方で、残さなかったものもある。
印象的な屋根は劣化していたため新たに作り直された。銅板を使い、オリジナルの形状と寸法を忠実に再現。時間の経過とともに銅色から濃茶色、黒色、緑色へと変化し、やがて工事前のような屋根色になることを想定している。軒丸の“歌”の刻印も再現された。
物質として残すもの。
意匠として再現するもの。
この二つを分けて考えるのが、アダプティブ・リユースの核心にある編集作業だ。
正面玄関の風除室まわりでは、天井と壁材の一部を保存して再利用し、内装には、天井で使われていた梅の枝の文様が描かれた創建時のエッチングガラスを再利用した。
残すものを選ぶ。直すものを選ぶ。新しくするものを選ぶ。
そして、新しい用途を与える。
この編集行為そのものが、建築のメンテナンスである。

提供 株式会社大林組

監獄に泊まる——「使うこと」は、過去を消すことなのか
舞台を奈良へ移そう。
2026年6月25日、重要文化財の旧監獄を活用したホテル「星のや奈良監獄」が開業した。高天井の舎房をつないだ赤レンガの客室が特徴で、総客室数は48室。
旧奈良監獄は、明治期に建てられた監獄建築のひとつだ。赤レンガの外観と、中央から放射状に舎房が伸びる配置で知られる。
ここで、避けて通れない問いがある。
負の歴史を持つ建物を、快適な滞在の場にしてよいのか。
美しい赤レンガだからホテルにする、では足りない。
そこは監獄だった。刑罰があり、収容された人々の暮らしがあり、矯正と更生という制度の歴史があった。
建築を再利用するとは、その空間が持っていた記憶までどう継承するかを問う行為でもある。
この施設では、ホテルの隣接施設として「奈良監獄ミュージアム」が運営されている。
宿泊と展示。
体験と、説明。
この組み合わせには意味がある。
泊まるだけなら、雰囲気の消費に終わりかねない。だが同じ敷地で歴史が展示されていれば、赤レンガの背後にあるものへ視線が向かう。
建物を使い続けながら、過去を消さない。
これは、負の遺産を扱うすべての再生プロジェクトに共通する条件だろう。
美しさだけを取り出して、文脈を捨てる。
それを避けられるかどうかが、アダプティブ・リユースの成熟度を測る物差しになる。



市役所も、新聞社も、次の役割を持つ
対象は文化財だけではない。
2026年4月21日にオープンした「OMO7横浜」は、名建築家・村野藤吾が手がけた旧横浜市庁舎を活用したホテルである。市民に親しまれた意匠を再解釈して継承し、新たにホテルへと生まれ変わった。関内駅前に立地し、総客室数は276室。
旧横浜市庁舎は1959年の完成。60年以上にわたって横浜市政の中心だった建物だ。
発表によれば、2025年には戦後建築として初めて横浜市認定歴史的建造物になったという。
ここが重要な転換点である。
寺社、洋館、町家。
私たちが「歴史的建築」と聞いて思い浮かべるのは、たいてい戦前より古いものだ。
だが本当の大波は、これから来る。
高度成長期に大量に建てられた庁舎、学校、オフィスビル、団地。それらが一斉に更新期を迎えている。
まだ文化財になっていない既存建築を、どう評価するか。
戦後モダニズムを、残すのか壊すのか。
判断の基準が定まらないまま、次々と解体が進んでいるのが現状だ。
そして京都では、もうひとつの転換が動き出している。
2026年6月15日、旧京都新聞本社ビルを活用した「Avani Kyoto(仮称)」を2029年度に開業する計画が発表された。約60年にわたり地域の風景を象徴してきた建物の歴史を継承し、その歴史的価値を活かしたホテル運営を行うという。
構成が興味深い。
改修棟(旧北館)は地上8階・地下2階、新築棟(旧南館)は地上5階・地下1階。敷地面積3,894㎡、延床面積約23,000㎡、総客室数は約240室。
改修棟と、新築棟。
つまり全部を古いまま残すのではない。
アダプティブ・リユースは、新築を完全に否定する思想ではない。
既存ストックを読み解き、残す価値のある部分と、新しくつくる部分を組み合わせる。建築の編集術である。
劇場からホテルへ。
新聞社からホテルへ。
同じ京都で、二つの転換が同時に進んでいる。




なぜ、再利用先は「ホテル」ばかりなのか
ここまで並べて、気づくことがある。
行き先が、揃ってホテルなのだ。
偶然ではない。宿泊業には、歴史的建築と相性の良い条件が揃っている。
第一に、建築そのものが体験価値になる。
オフィスなら、内装が古かろうが新しかろうが仕事内容は変わらない。だがホテルでは、建物の記憶がそのまま商品になる。
第二に、価格に上乗せできる。
歴史、物語、意匠。これらは客室単価に反映しやすい。ビルの賃料は相場で決まるが、宿泊単価は体験の質で決まる。
第三に、滞在時間が長い。
一晩を過ごせば、天井を見上げ、廊下を歩き、朝の光の入り方を体感する。建物の記憶を伝える媒体として、これ以上のものはない。
第四に、そして最も重要な点として、収益を維持修繕費へ戻せる。
保存された建物には、必ず金がかかる。
補修、点検、設備更新、耐震性能の維持。文化財であればなおさら手間がかかる。
補助金や寄付だけでは、その費用を毎年賄うことは難しい。
だが宿泊事業が回っていれば、建物自身が自分の修繕費を稼ぐことになる。
ホテル化とは、歴史建築にとって「保存費用を生み出す装置」を組み込むことなのだ。
実際、この考え方を事業モデルとして掲げる企業もある。
2026年7月17日、鳥取県倉吉市に開業した「風の 倉吉」は、鳥取県指定保護文化財の「小川家」と、国登録有形文化財の「旧髙多家住宅」という2棟の元邸宅を保存・再生し、わずか11室の客室とした分散型ホテルである。所在地は、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された打吹玉川の町並みの中だ。
運営する風のヘリテージは、「税金に依存しない歴史的建造物の保存・利活用モデル」の構築を掲げ、2026年3月時点でグループが保存・利活用を手がける歴史的建造物は119棟にのぼるという。
一棟ではなく、複数棟。
そして町並みごと、宿泊の舞台にする。
建物単体の保存から、街区へ。街区から、地域文化へ。
アダプティブ・リユースの単位は、着実に大きくなっている。


保存した建物が、地域の人から遠ざかってはいけない
ただし、この構図には落とし穴もある。
ホテル化すれば、経済的には維持しやすくなる。
だが、かつて公共施設や地域施設だった建物が高価格帯のホテルになれば、地域の住民が中へ入りにくくなることもある。
旧横浜市庁舎。
旧奈良監獄。
旧京都新聞本社。
これらは、もともと都市や社会と強い関係を持っていた建物だ。
市民が手続きに訪れ、社会制度が運用され、地域の情報が編まれていた場所である。
その建物が、宿泊客だけのものになってしまったら。
物理的には保存されても、社会的なつながりは失われる。
だからこそ、宿泊しなくても建物と関係を持てる仕組みが要る。
カフェ。ミュージアム。レストラン。公開スペース。建築ツアー。地域イベント。
Avani Kyotoの計画では、宿泊客と地域の人々が自然につながる「ラウンジ」や「レストラン」を、町に開かれた社交の場として運営する方針が示されている。多様なカルチャーを通じて五感を刺激する開放的なソーシャルスペースを創出し、文化の中心を担う拠点づくりを目指すという。
星のや奈良監獄でも、隣接する奈良監獄ミュージアムが公開施設として運営されている。
帝国ホテル 京都の内装は、新素材研究所の榊田倫之氏が手がけ、弥栄会館の意匠を受け継ぎつつ、日本古来の自然素材などを用いた空間としている。
建物を残すことと、公共性を残すこと。
この二つは自動的にはつながらない。設計しなければ、失われる。
アダプティブ・リユースとは、建物だけでなく、その建物が担っていた社会的な役割まで再設計する作業である。


「新築しないこと」の環境価値も、これから測られる
ここで、話を地球環境につなげたい。
古い建物を使い続けることは、環境に良い。
直感的にはそう思える。新しく建てなければ、コンクリートも鉄も使わずに済むからだ。
だが、この直感は検証されなければならない。
国土交通省の検討会は、日本のCO2排出量の約40%を建築物分野が占めており、従来の省エネ化にとどまらない取組が必要だと指摘している。そのうえで、建築物の計画から解体までのライフサイクル全体で排出されるCO2を算定・評価する「建築物LCA」の実施を促す制度を、2028年度を目途に開始することを目指している。
そして、制度化を待たずに運用は始まっている。
令和8年度の既存建築物省エネ化推進事業では、大規模建築物(2,000㎡以上)の改修の場合、ライフサイクルカーボン評価を実施し、その結果を国に報告することが要件のひとつとされた。
同様に、令和8年度サステナブル建築物等先導事業でも、2,000㎡以上の新築・増改築・改修についてライフサイクルカーボン評価が求められている。
使う段階の省エネだけではない。
材料の製造、建設、改修、そして解体まで含めて、炭素の負荷を見る。
この物差しで測れば、アダプティブ・リユースも無条件に善ではなくなる。
どれだけ既存の躯体を残したか。
新しい材料をどれだけ投入したか。
耐震補強にどれだけの資材とエネルギーを要したか。
改修後、何年間使い続けられるのか。
運用時のエネルギー消費はどう変わったか。
「古いから環境に良い」ではなく、「どう残したから、どれだけ削減できた」へ。
1万6千枚のタイルを生け捕りしたという事実も、そこで初めて数字として意味を持つようになる。
文化財の記事が、建築の循環経済の記事に変わる瞬間だ。
建物を「直す」のではなく、人生を延ばす
建築物には、寿命がある。
だが、用途の寿命と、建物そのものの寿命は同じではない。
ここが、この話のすべてだと思う。
劇場としての役割が終わっても、建物はホテルとして生きられる。
監獄として使われなくなっても、歴史を伝える宿と博物館になれる。
市役所としての役割を終えても、街を訪れる人の拠点になれる。
新聞社が移転しても、都市の風景として建物は残せる。
用途が死んだからといって、建物まで壊す必要はない。
これまでの建築は、一直線だった。
「建てる → 使う → 古くなる → 壊す → また建てる」
そこに、折り返しをつくる。
「建てる → 使う → 直す → 役割を変える → また使う → 手入れする」
診断し、残す価値を決め、補強し、用途を変え、使い、収益を生み、維持する。
そしてまた診断する。
自然の再生でも、インフラの点検でも、この循環は変わらない。
建築だけが例外である理由はない。
~全国へ広がる動き~
発表によれば、香川県では丸亀城の「延寿閣別館」が2026年7月に国登録有形文化財となり、一日一組限定の宿泊施設として9月から本格的に利用される。
城郭の敷地内にある建物を、泊まれる場所として活かす試みである。

祇園の空に、天守閣のような屋根が残っている。
中で行われていることは、演劇でも映画でもない。
それでも、あの屋根は祇園の風景であり続けている。
建築をつくる技術だけでなく、建築を生かし続ける技術。
壊れたら建て替えるのではなく、役割を変えて使い続ける。
それが、建築における地球の修理技術ではないだろうか。
参照:
「帝国ホテル 京都 本棟 国登録有形文化財として継続登録~新登録名称は「旧弥栄会館」に」(帝国ホテル・2026年7月15日)
https://www.imperialhotel.co.jp/sites/default/files/file/2026-07/a41248822afe42a40697766b9898f505.pdf
星のや奈良監獄(星野リゾート/2026年6月25日開業)
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/hoshinoyanarakangoku/
OMO7横浜 by 星野リゾート(2026年4月21日オープン)
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/omo7yokohama/
「『Avani』ブランドが日本初進出 旧京都新聞本社ビルを活用して『(仮称)Avani Kyoto』を2029年度開業予定」(ロイヤルホールディングス・2026年6月15日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000551.000071323.html
「ヘリテージ・リトリート宿『風の 倉吉』が鳥取県倉吉市に2026年7月17日に開業」(風のヘリテージ/バリューマネジメント)
https://www.vmc.co.jp/news/kurayoshi_open/
「建築物のライフサイクルカーボンの算定・評価等を促進する制度に関する検討会」(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk4_000302.html
FAQ
Q. アダプティブ・リユースとは何ですか?
A. 既存の建物を解体せず、用途を変えて再利用する手法である。劇場をホテルに、庁舎を宿泊施設にといった転換を通じて、建物を使い続けながら維持していく考え方を指す。
Q. 保存範囲が縮小したのに、なぜ文化財の登録が続いたのですか?
A. 外壁2面と躯体の保存、タイルやテラコッタの再利用、銅板屋根や飾り金物の更新などにより、建物の最も重要な要素である立面構成の価値が十分に保持され、新たな生命を与えられたと評価されたためである。
Q. 「生け捕り」とは何ですか?
A. 再利用を前提に、既存の材料に損傷を与えないよう取り外すことを指す。帝国ホテル 京都の工事では、外観を構成していたオリジナルのタイル16,387枚が生け捕りされ、貼り直しに使われた。
Q. 屋根はなぜ作り直したのですか?
A. 劣化が進んでいたためである。銅板を用いてオリジナルの形状と寸法を忠実に再現しており、時間の経過とともに色が変化し、やがて工事前のような屋根色になることが想定されている。
Q. 負の歴史を持つ建物を宿泊施設にすることに問題はないのですか?
A. 建物が担っていた記憶をどう継承するかが問われる。星のや奈良監獄では隣接して奈良監獄ミュージアムが運営されており、使い続けながら過去を伝える構成がとられている。
Q. なぜ再利用先にホテルが多いのですか?
A. 建築そのものを体験価値にでき、歴史や物語を客室単価に反映しやすい。滞在時間が長いため記憶を伝えやすく、何より事業収益を維持修繕費へ戻せるという利点がある。
Q. 文化財ではない建物も対象になりますか?
A. なる。旧横浜市庁舎のような戦後の庁舎やオフィスビルなど、まだ文化財に指定されていない既存建築をどう評価するかが、これからの大きな論点になる。
Q. ホテル化すると、地域の人が使えなくなりませんか?
A. その懸念はある。だからこそ、ラウンジやレストランを町に開かれた場として運営したり、ミュージアムや公開スペースを設けたりと、宿泊しなくても建物と関われる仕組みの設計が重要になる。
Q. 古い建物を使い続けることは、環境にとって良いのですか?
A. 一般的には新築より負荷が小さいとされるが、検証が必要である。既存躯体をどれだけ残したか、補強にどれだけ資材を要したか、改修後に何年使えるかによって結果は変わる。
Q. 国はどのような制度を進めているのですか?
A. 建築物の計画から解体までのライフサイクル全体で排出されるCO2を算定・評価する制度を、2028年度を目途に開始することを目指している。すでに一部の補助事業では、大規模建築物の改修にライフサイクルカーボン評価が求められている。
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