
★要点
大箱根カントリークラブが、ゴルフの打席にセットする天然芝キット「SHIBAHUプレート」を導入。人工芝マットの定期交換で生じる産業廃棄を抑えつつ、本番に近い打感を提供する“循環×実戦”の練習環境を整えた。
★背景
スポーツ施設の環境負荷と体験価値の両立が課題だ。人工芝の廃棄や微細破片、資材更新のコストに対し、再生可能な芝資源による循環モデルが現実解になりつつある。ゴルフ練習の質とサステナビリティを同一平面で最適化する試み。
ゴルフの練習マットを、育てる時代へ。大箱根カントリークラブが導入した「SHIBAHUプレート」は、縦70×横30センチの天然芝キットを打席に差し替えて使う方式だ。打感はコースそのもの。使い終わった芝は回収・再生され、ふたたび打席へ戻る。廃棄を積み増す練習から、循環を回す練習へ。ゴルフ練習の文法を書き換える小さなプラットフォームである。
“交換”から“循環”へ——ゴルフ人工芝の廃棄負債を軽くする。
ゴルフの人工芝マットは年2〜3回の交換が必要で、多い年には約60枚が廃棄対象になる。ゴルフ練習するほど積み上がる産業廃棄。SHIBAHUはこの前提を裏返す。天然芝のプレートを使い、使用後は工場に返送して再生、再び供給する。資材は土に立ち戻り、練習の痕跡は次の生育に変わる。消費型の設備更新から、循環型の資材運用へ。施設運営の“環境勘定”の付け直しだ。
“打感”は最大の教育装置——ミスの情報量が変わる。
芝の抵抗、刈り高、根が絡む粘り。天然芝は、ダフリとフェース向き、入射角の誤差をそのまま返す。人工芝に比べ、インパクトの診断力が高い。スコア100前後のプレーヤーでも、プレート1枚で40〜60球が目安。量より質で、1球の学びを濃くする。練習レンジが“シミュレーターの外側”を取り戻す。
仕組みはシンプル「使う→返す→育てる」。
厚み約5センチの高麗芝プレートを、専用打席にセット。利用後は“使用済みラック”へ戻す。プレートは瑞穂町の芝畑へ送り返され、再生循環に入る。価格は1枚1,000円(税込)。サプライチェーンは短いほど強い。地元の芝生畑がバックエンドを担うことで、輸送と在庫のムダも削れる。コース管理の知見が、練習設備の運用に接続される。


“全国初”の導入。まずは1打席から、増設は需要を見ながら。
大箱根のドライビングレンジは20打席。今回は1打席からのスタートだ。利用状況に応じて増設を検討する。導入ハードルを下げ、小さく始めて早く学ぶ。設備投資は“可変費化”できる部分をつくるとスケールが利く。芝の在庫、メンテナンスの頻度、再生リードタイム——運用のKPIが整えば、他施設への横展開も見えてくる。増える。


スポーツ施設のサーキュラー化“緑の体験”を積み増す。
サステナブルは表示ではなく、手触りだ。天然芝でのゴルフ練習は、環境負荷の低減だけでなく、来場体験の差別化になる。打席で自然を感じ、練習後の芝が再び畑に戻る流れを可視化する。循環の物語は、ゴルフファンのロイヤルティを生む。スポーツ施設の競争力は、コースの難度やアクセスだけではない。“循環の質”がゴルフというブランドを押し上げる。
【導入情報】
・開始:2025年10月10日(金)
・場所:大箱根カントリークラブ(神奈川県足柄下郡箱根町仙石原1246)
・方式:天然芝グラスプレート(高麗芝)を打席にセット/使用後に回収・再生
・規模:全20打席のうち、まず1打席で運用(増設検討)
・料金:1枚 1,000円(税込)
・協力:SHIBAHU(東京都西多摩郡瑞穂町の芝生畑で供給)
・クラブ情報/アクセス:東名・御殿場ICから約20分
あわせて読みたい記事

天然素材のオリジナル・ゴルフティー、ファイン株式会社が受注生産開始

CO2吸収技術でカーボンマイナス実現へ、東急リゾートタウン蓼科

筑波東急ゴルフクラブ、新規「G認証」で生物多様性保全に貢献