
★要点
長崎・五島では、赤ワインの搾りかすを蒸留し、GOTOGINの原酒と合わせたジン「GOTOGIN feat. GOTO WINERY」が、10月8日発売の数量限定商品として発表された。
東京・代官山では、ショコラトリーで出るカカオ豆の皮を使ったヴァイツェン「DAIKANYAMA SORYO BEER」が、街の祭りに合わせて登場した。
三重・伊勢では、創業450年を超える老舗が、自社で使ってきた杉の味噌樽で追熟させた原酒をブレンドしたワイルドエール「KADOLABO 040 Miso」を8月25日に発売した。
残りものを味に変える発想と、使い込んだ道具にもう一度働いてもらう発想。この秋の3本は、乾杯の向こうに循環の物語を連れてくる。
★背景
ワインのぶどうの搾りかす、チョコレートをつくる時に出るカカオの皮、醸造で残る麦芽の粕。食品や飲料の製造では、どうしても副産物が生まれる。飼料や肥料として使われるものもあるが、行き場のないまま捨てられるものも少なくない。
今回取り上げる蒸溜所や醸造所は、ほかの仕事で生まれた副産物や、長く使ってきた道具を、新しい一杯に生かしている。
大量生産ではなく、地域の中の顔の見える関係から生まれる循環。それは、サステナブルを「我慢」ではなく「楽しみ」として味わう入り口にもなる。
グラスを光にかざす。
島のぶどうの香りが立ちのぼるジン。ホワイトチョコレートを思わせるビール。味噌蔵の香りをまとった、琥珀色のエール。
共通するのは、ほかの仕事で生まれたものに、別の役割を見つけたことだ。
ワインを搾った後のぶどう。チョコレートづくりで取り除くカカオの皮。長く味噌を仕込んできた杉の樽。
副産物を原料に使う。使い込んだ道具を、別の醸造に生かす。三つの一杯は、その二つの発想から生まれた。
実りの秋。日本の三つの土地から届いた、“残りもの”で乾杯する3本を紹介する。
島のぶどうの“その後”を、島のジンに——GOTOGIN feat. GOTO WINERY
長崎県の五島列島。福江島にある五島つばき蒸溜所は、島の椿を使ったクラフトジン「GOTOGIN」で知られる小さな蒸溜所だ。2022年に島の半泊地区で開業した。
同じ五島市にある五島ワイナリーとの初めての共同開発商品が、「GOTOGIN feat. GOTO WINERY」だ。10月2日の発表では、発売日は10月8日と案内されている。
主役は、ワインの搾りかす(ポマース)だ。
五島ワイナリーが100%五島産のぶどうで仕込んだ赤ワイン、メルロー。その醸造で、果汁を搾った後に残る皮や種を蒸留し、ぶどうに残るおいしさを余すところなく取り出した。それをGOTOGINと合わせている。
搾りかすには、果汁を搾った後も、ぶどう由来の香りや味わいが豊かに残っているという。
同社によると、メルロー由来の甘やかな果実の香りに、ふくらみのある果実感が重なる味わいに仕上げたという。ロックで食後に、ソーダで割って食事に合わせる飲み方を提案している。
アルコール分47%、500mlで6,600円(税込)。販売先として、公式オンラインショップやボトルショップ、島内の酒販店が案内されている。10月3日と4日の「五島列島オクトーバーフェスト」での先行試飲販売も告知された。
島で育ったぶどうがワインになり、その残りがジンになる。島の中で、ひと粒のぶどうが二度の役目を果たす。

GOTOGIN(五島つばき蒸溜所)
https://gotogin.jp/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000038.000109057.html
ショコラトリーの皮が、祭りのビールに——DAIKANYAMA SORYO BEER
東京・代官山。チョコレートの店先から出る、カカオ豆の薄い外皮。
カカオハスクと呼ばれるこの皮は、チョコレートづくりの過程で取り除かれ、多くは捨てられてきた。
その皮を使ったビール「DAIKANYAMA SORYO BEER」が登場した。醸造元の9月30日の発表によると、9月19日から代官山で提供を始めたという。
企画したのは、代官山のクラフトビールバー「ビビビ。」と代官山商店会。カカオハスクは、商店会の会長が営むショコラトリー「LA BASE de Chez Lui」から出たものだ。醸造は、神奈川県川崎市のカギヤブルワリー(鍵屋醸造所)が担った。
スタイルは、小麦麦芽を使うドイツ生まれのヴァイツェン。アルコール度数は4.5%と軽やかだ。カカオの皮を副原料に加え、ホワイトチョコレートを思わせる風味をめざした。
名前の「SORYO」は「爽涼」。代官山で毎年開かれる祭り「代官山爽涼祭」に合わせて発売し、その名を取った。「ビビビ。」の店舗では生と瓶で、商店会に加わる各店では瓶で味わえる。
面白いのは、カギヤブルワリーの立ち位置だ。
同社はこれまで、ビールの仕込みで出る麦芽の粕を養鶏場の飼料に回す「CRAFT EGG」や、麦芽の粕でシイタケを育てる「カワサキノコ」など、自らの副産物を他の産業に渡す取り組みを続けてきた。
今回は、その逆だ。チョコレートという別の仕事から出た副産物を受け取り、ビールに変える側に回った。
循環の矢印は、一方向ではない。街の中で、店と店が副産物を渡し合う。

DAIKANYAMA SORYO BEER(株式会社KEY CORPORATION)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000028.000127299.html
味噌樽に、もう一度仕事をしてもらう——ISEKADO「KADOLABO 040 Miso」
三重県伊勢市。伊勢神宮の参拝客に親しまれてきた二軒茶屋餅角屋本店は、1575年(天正3年)創業の老舗だ。餅菓子に始まり、1923年からは味噌と醤油の醸造を、1997年からはクラフトビール「ISEKADO(伊勢角屋麦酒)」を手がけてきた。
その歩みのなかで、味噌造りの道具とビール醸造が出会った。
ISEKADOの実験醸造プログラム「KADOLABO」の40作目、「KADOLABO 040 Miso」。自社の味噌・醤油事業で使ってきた杉の味噌樽で追熟した原酒を、ブレンドに用いたワイルドエールである。
つくり方は、驚くほど手間がかかっている。
まず、ビール酵母で発酵させたサワーエールの原酒を、フレンチオーク樽で、ブレタノマイセスなどの微生物の働きによって2年あまり熟成させる。味噌樽での追熟は1カ月半にとどめ、その全量ではなく一部をブレンドに用いた。同じ原酒を入れた8本の樽は、それぞれ異なる個性を示しており、状態を見て使う樽を選んだという。瓶詰め後は、さらに約3カ月の瓶内二次発酵を行った。
同社の説明では、オーク樽がバニラのような香りを与えるのに対し、味噌樽が持ち込むのは塩気と、蔵に棲みついた菌だという。
仕上がりは琥珀色。原酒のライトゴールドに、チェリーを使ったバッチの赤みと、味噌樽由来の色合いが重なった。強い塩味と酸味に、味噌蔵を思わせる発酵の香りがあると説明している。
きっかけは、2022年に同社が行ったクラウドファンディングの支援者の一人だった。「サワーエールをつくりたい。味噌か醤油を使いたい」。その提案を受けて、工場の空き部屋をサワーエール専用の熟成庫に改装したところから、この一本は始まった。
アルコール度数7.0%、750mlで3,850円(税込)。発売日は8月25日。公式発表では、限定特約店のみで販売し、EC販売は行わない。同じ味噌樽の条件を再現できないため、一度きりの製品と位置づけている。
醸造を担当した山宮拓馬氏は、欠点のある樽を外し、残った個性をならし、飲み物として成り立つ水準に着地させる、という手順をあらためて確かめられたことが一番の収穫だったと語る。
長く使い込まれた道具には、その家の時間が染み込んでいる。その時間ごと、別の味わいに変える。使い込んだ道具の個性を、新しい仕事に生かす循環である。




ISEKADO(有限会社二軒茶屋餅角屋本店)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000051.000086893.html
https://www.isekado.co.jp/press-release/kadolabo_040/
残りものは、物語を連れてくる
3本を並べてみると、共通点が見えてくる。
共通するのは、原料のすべてが近隣産ということではない。島のワイナリーと島の蒸溜所。街のショコラトリーと、街のバーと、川崎のブルワリー。そして、同じ会社の味噌蔵とビール工場。それぞれの仕事のあいだに、新しいつながりをつくったことだ。
すぐ隣にいる作り手の「残りもの」や「使い込んだ道具」を受け取り、もう一度、価値に変えている。
数量や販路を限った商品もある。ここで注目したいのは規模の大きさよりも、副産物や道具の価値を見つけ直す関係が生まれたことだ。
副産物は、ただの廃棄物ではない。その土地のぶどう、その街のチョコレート、その家の味噌。それぞれの物語を連れている。物語があるから、人は手に取り、味わい、誰かに話したくなる。
使い道を探す動機を「もったいない」だけに頼らず、「おいしい」「面白い」に広げること。
そして、道具を使い続けること。
メンテナンスとは、壊れたものを直すことだけではない。役目を終えたように見えるものに、次の役目を見つけることでもある。
この秋は、“残りもの”で乾杯しよう。
※商品価格、発売日、取扱先は各社の発表情報に基づく。販売状況・在庫は各店への確認が必要です。
※20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。飲酒運転は法律で禁止されています。
【この秋の“巡らせる”週末】
・Repair Week Japan 2026
開催期間は10月2日(金)〜18日(日)。主催協会に参画する全国約900店舗規模のネットワークを通じて、「直して使う」を発信する計画だ。約900店すべてで同じ催しを行うという意味ではなく、実施内容や対象店舗は公式案内を確認したい。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000186642.html

・パスザバトンマーケット Vol.22
10月10日(土)・11日(日)、コクヨ東京品川オフィス「THE CAMPUS」。64ブランドのB品やデッドストックを、次の持ち主へバトンする。通常入場料500円(小学生以下無料)。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000128.000060866.html

・yusan(DESIGNART TOKYO 2026)
10月30日(金)〜11月3日(火・祝)、メイン会場「AUTOBAHN/KK線」(旧東京高速道路)。徳島県産スギの年輪を0.3mmの薄さにスライスし、突板の技術で表面に施したスツールなどを展示する。メイン会場への入場にはチケットが必要。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000153433.html

FAQ
Q. ポマース(ワインの搾りかす)とは何ですか?
A. ワインの醸造で、ぶどうの果汁を搾った後に残る皮や種などのことである。搾った後もぶどう由来の香りや味わいが残っており、蒸留酒の原料や、飼料・肥料などに使われる。
Q. カカオハスクとは何ですか?
A. この記事では、カカオ豆の外側を覆う皮を指す。チョコレートづくりの過程で取り除かれる副産物で、DAIKANYAMA SORYO BEERではショコラトリーから出るこの皮を副原料として使っている。
Q. ワイルドエールとはどのようなビールですか?
A. ブレタノマイセスなどの酵母や細菌の働きを生かし、発酵・熟成させるビールの呼び方である。製法や味わいには幅がある。今回のKADOLABO 040 Misoでは、ビール酵母で発酵させた原酒を、ブレタノマイセスを中心とする複数の微生物が働く樽で熟成させている。
Q. なぜ味噌樽でビールを熟成させるのですか?
A. ISEKADOによると、オーク樽がバニラのような香りを与えるのに対し、味噌樽は塩気と蔵に棲む菌をビールに持ち込む。味噌造りに使われてきた樽の個性を、ビールの味わいとして生かす試みである。
Q. アップサイクルとリサイクルは何が違うのですか?
A. リサイクルは、使い終わったものなどを資源として再び利用すること。アップサイクルは、副産物や使われなくなったものなどに、新しい用途や価値を加えて生かす考え方である。今回の3例では、副産物の原料利用と、醸造道具の別用途への活用を、区別して紹介している。
Q. 紹介した3本は、どこで買えますか?
A. 各社の発表では、GOTOGIN feat. GOTO WINERYは五島つばき蒸溜所の公式オンラインショップ、ボトルショップ、五島の酒販店。DAIKANYAMA SORYO BEERは代官山の「ビビビ。」と代官山商店会の加盟店。KADOLABO 040 Misoは限定特約店のみで、EC販売は行わない。数量や取扱いに限りがあるため、購入・来店前に販売状況を確認したい。
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